出版社内容情報
少女クローディアは,弟をさそって家出をします.ゆくさきはニューヨークのメトロポリタン美術館.2人は,ミケランジェロ作とされる天使の像にひきつけられ,その謎を解こうとします.
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
223
何年ぶりかで再読。静かに心にしみ透る作品。11歳の少女クローディアのイニシエーションがテーマなのだが、それは一気に飛び越えるようなスタイルをとらずに、これから何年もかかって熟成されて行くような種類のものだ。まさに女の子のイニシエーションに相応しいだろう。「秘密」という言葉は、まことに意味が深い。2012/02/04
アキ
125
子どもの頃以来の再読です。メトロポリタン美術館へはグランド・セントラル駅から5番街でなくて、マディソン通りを選び、八十番街の角を曲がると目の前にあります。美術館には三六万五千点以上の美術品があり、正面から2階にあがると正面にイタリア・ルネサンスの広間があり、ミケランジェロ作かもしれない天使の小像が見られます。1階右側エジプト美術の部屋では古代エジプトの墓の前で質問をして、エジプトネコの青銅の像は小さな金の耳輪をしています。コネチカット州ファーミントンでフランクワイラー夫人と会って秘密の約束をしたのでした。2023/08/27
アン
116
少女クローディアは、不公平で同じことの繰り返しの日々に退屈し家出を計画。行く先はメトロポリタン美術館。冒険の相棒となる弟ジェイミーとのやり取りは微笑ましく絆も深まって。クローディアは、その頃美術館で展示された天使の像の謎解きに夢中に。目には見えない大切な何かを持ち帰り、これまでとは違う自分になりたいと願う彼女の健気さが愛おしく、同じ秘密を共有することになるフランクワイラー夫人との心の触れ合いが印象的です。多感な少女の自分探しと成長の物語。クローディアはきっと素敵なレディになることでしょう。 2022/06/03
bluemint
106
美術館へ泊まるために家出するが、冒険は割とあっさり。この年になり読んで思うのは、お金持ちのおばあさんフランクワイラーさんの、大人としてのふるまいである。つま先立ちに大人の世界に入ろうとしているクローディアをひと押しする。そして、知識と経験について意見する。「勉強はいっぱいしなくてはいけないが、日によってはもう内側に入っているものを膨らませるゆっくりした時間が必要」と(これは先日読んだ外山滋比古の「思考の整理学」にも全く同じことが書いてあった)。秘密を持てたことで、家出前とは少し大人になれたのかな。2018/06/01
はる
101
素敵な物語。物語の前半もわくわくとして楽しいけれど、私は後半の姉弟とフランクワイラー夫人とのやりとりがとても好き。ちょっといたずら好きで物分かりのいいフランクワイラー夫人が魅力的。でも夫人はもう82歳。老い先短い夫人と未来ある姉弟とのやりとりは、ユーモアを交えつつ幾許かの切なさが漂う。その心情が透けて見えるセリフが巧みですね。一つ一つのセリフがみんないい。子供の頃は分からなくても年齢を重ねると沁みる描写です。ラストには意外な事実も明らかになり、最後まで楽しめました。2019/11/18