内容説明
ゲットーから解放されたユダヤ人。彼らは、ドイツ文化とどうかかわっていったのか。「教養」と啓蒙の可能性を信じた数々の知的営為。それが国民主義の激流にのみこまれていく悲劇を論じた、碩学の一冊。
目次
第1章 文化的解放
第2章 ドイツ・ユダヤ人とドイツ民衆文化
第3章 知的権威と学問
第4章 左翼アイデンティティ
第5章 終わり、そして新しい始まり?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
印度 洋一郎
2
19世紀初頭のゲットーからの解放からナチス政権発足まで、ドイツのユダヤ人が試行錯誤を続けた”共生”とは何だったのか?自身もドイツ系ユダヤ人である著者は、それは教養主義への信奉だと分析している。全人的な教養を深めることで生まれる自立する市民によって、出自に問われない平等な社会を作る、それが理想だった。しかし、概ね都市住民で教育ある中産階級だったユダヤ人は、ドイツの民衆の感情や強い指導力への渇望について、無頓着であり、結局ドイツ社会の中で孤立してしまう。そして、高まる怨嗟の先に待っていたのは、ナチスだった。2011/08/09