内容説明
アーリヤ人侵入説、大河文明説、二大首都説…インダス文明はこれまで誤った「神話」に彩られてきた。最大の理由は、遺跡の発掘が難しく、モヘンジョダロとハラッパーの二つに依拠した解釈が横行してきたからだ。近年、新たな遺跡の発掘により従来の知見が続々と覆されている。多様な遺跡の実態を紹介しながら、最新のインダス文明像を描き出す。
目次
第1章 インダス文明とはなにか
第2章 モヘンジョダロ遺跡とハラッパー遺跡―インダス文明に関する神話
第3章 パキスタンの砂漠地帯に広がるインダス遺跡―涸れた川とインダス文明
第4章 ガッガル川流域を踏査する―はたしてサラスヴァティー川は大河だったのか
第5章 ドーラーヴィーラー遺跡―乾燥した「水の要塞都市」
第6章 カッチ県とその周辺の遺跡―海岸沿いのインダス文明遺跡と流通
第7章 新しいインダス文明像を求めて
著者等紹介
長田俊樹[オサダトシキ]
総合地球環境学研究所名誉教授及び客員教授。神戸市生まれ。北海道大学文学部卒。インド・ラーンチー大学博士課程修了(Ph.D.)。国際日本文化研究センター助手、京都造形芸術大学教授を経て、2003年10月から2012年9月まで総合地球環境学研究所教授。専門は、言語学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Koning
25
インダス文明の発掘をやってる先生によるインダス文明の現在の本当のところという感じの本。マヤやインカの本を読むと如何にテレビや教科書が古くて否定された話をそのまんまやってるかという話を聞くのだが、インダスはもっと酷かったよorz。メソポタミア好きからはメルハと伝えられるインダス文明は古くはウィーラーによるモヘンジョダロとハラッパー2つだけの遺跡とメソポタミアの文化を引っ張ってきて、大河、文字、中央集権という所謂古代文明の定義的な神話を造っちゃったわけだけど、その後わんさと見つかった遺跡を見れば、(続く2014/08/16
中年サラリーマン
16
ナポレオン、ロゼッタストーンのエジプト文明に対して正にインダスは謎である。インダス文字も完全には未解明。それは日本列島ぐらいの範囲に広がる多数の遺跡、遺跡が管理されない、発掘しても出土品がそのまま、発掘レポートもなかなか作成されない、そしてインドーパキスタンの政情不安による発掘そのものの困難さだ。しかし最近少しずつ発掘も進み色々なことがだんだんとわかりつつある。「古代文明は大河付近で発生するものだ」というそもそもの固定概念も今、インダスで覆ろうとしている。僕が生きている内にパラダイムシフトが起こるかも。2014/04/02
Rico_bosin
2
先端の研究を紹介しながら,アーリヤ人侵入説や大河文明説など従来流布されてきたインダス文明にまつわる言説を「誤った神話」と退け,多様な社会集団の相互依存に基づいた,交易とネットワークによる文明というインダス文明像を提示。現在のインドとパキスタンの状況が研究の進展に影響を(多くは悪い方向で)与えているとの指摘も興味深い。2014/02/23
きーよ
2
著者はインドのラーンチー大学を経て総合地球環境学研究所教授。専門は古代農耕や言語学。文献リストが15ページにも及ぶ学術書である。難解で飛ばし読みとなった。古代文明は4つ、エジプト(ナイル川)、中国(黄河)、メソポタミア(チグリス・ユーフラテス川)、インダス(インダス川)で其々の文字を持つ。インダス文明は印度、パキスタン、アフガニスタンに跨がり総数2600遺跡、発掘調査がされたのは僅か147遺跡。他の3つの文明との違いを国家の成立や大河に無関係に発達、インダス文字は未解明等を挙げ、素人にも興味は尽きない。2013/11/11
たてたてヨコヨコ
1
インダス文明は大河文明ではなかったとのこと。歯石で食生活がわかり、当時の人がすでにカレーのようなものを食べていたことがわかっているのも面白い。ウルなどメソポタミアとの交易も行われていたとのこと、インダス文字の解明が待たれる。2019/03/09