Science and technology<br> 半導体とノイズのはなし

  • ポイントキャンペーン

Science and technology
半導体とノイズのはなし

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 224p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784526048067
  • NDC分類 549.8
  • Cコード C3054

出版社内容情報

は し が き

 苦労した……本書をまとめるのに…….
 「どうしてだろうか?」と,考えてみると,半導体屋に対しいいたい放題のことを書いたから…….とくに,後半に…….
 しかし,著者は,長年,不要輻射対策の仕事に携わってきたが,半導体を作る立場ではなく,使用する側として,“半導体の使いにくさ”,それから“半導体屋の非協力さ”には,散々,泣かされてきたし,ただ今現在でも,泣いているからこそ書いたのだ.いや,書けたのだ.
 しかし,半導体屋は,図1ではないが,「生産量が,落ち込むのではないか?」などというニュースが流れるだけで,日本の景気が,おかしくなるほどの大産業.
 大産業……ということは,大き過ぎて,半導体のユーザーなど,とてもじゃないが,その足元にも及ばない!!
 一方,ユーザー,すなわち,電子回路屋は,物を集めて,それをはんだでくっ付けるだけの産業で,物その物を変える
……たとえば,化学鉄鋼とか非鉄金属産業……身近な例でいうと,抵抗とかコンデンサ等の部品産業のように,物その物の性質を,変える産業ではなく,要するに,物を寄せ集めるだけの産業.
 そんな産業なのに,何か新しい電子機器とか装置ができ上ると,「ほれ,こんなものができたよ」とか「電子産業は,すばらしい!!」などといって,さも自分逹だけで全部を作り上げたような顔をする.
 具体例を挙げると,あるOA機器,物すごく薄型のものができたとの発表.しかし突っ込んでうかがったところ,電解コンデンサの,薄くて良いものができたためとか…….
 考えてみると,誠に恥ずかしい話だが,電子機器産業とはそんな業界だということで,お許し願おう.
 しかし,いろいろな,部品個品を使う立場の電子回路屋から,半導体を見た場合,不平不満だらけなのである.
 というのは,その使いにくさ!!
 ここで,図2…….実は,このイラストを画いたのが,1978年.
 それ以来,ズーと,半導体の使い憎さに泣いてきた……いや,泣かされてきたし,今でも泣いている著者.
 で,そんな鬱憤(うっぷん)を一度にドカンと,発散させたのが,本書なのだ!!
 そうそう,図3……「何?……これ?……雲丹(うに)?」なんていうなかれ.
 今の半導体の進歩から考えると,ますます,高密度化され,そのため,ピン数が,ベラボーに増えてしまって,数年後には,『ピンだらけのパッケージ』になってしまうのではないか??……と,心配になって画いたイラスト.
しかも,この雲丹……という名のパッケージの中に,物すごい大電流が流れ込み,その熱で,半導体自体が暴走してしまうのではないか……などという心配すら出てきた.
 「それは,一大事!!」なんて他人ごとみたいなことは,いっておられないのであって,ユーザーの使い勝手などは,全然,考えずに,ドンドコドンドコ,半導体は勝手に進歩して行く.
 それなのに,こんないやらしい問題のすべてを,ユーザーの責任で解決せねばならぬのである.
 一方,電子回路屋の前面には,ノイズとか不要輻射対策という大難関.ということで,正に,前面の虎,背面の狼……. こんな苦しみから,著者は,半導体メーカーに,
 「こういうパターンにしたら,不要輻射問題は,解決しますよ」という標準パターンを示せとか,「ノイズ問題相談所を開設せよ」などと,いい出したわけだ.
 しかし,いっかな著者だって,半導体屋に苦言ばかりを呈しているのではなく『ユーザーもだらしがない』とも,いいたいのである.
 というのは,今まで,ユーザーとして,半導体屋に文句をいったことが,ほとんどなく,与えられた半導体を,唯々諾々,そのまま,使用してきた.実に,だらしがなかった.
 そこで,これからは,半導体屋に物申せ!!……といいたいのである.
 いや,いいたいだけでなく,著者,かなり以前から,実際に,いったり,書いたりしてきた。
 その影響かどうかは知らないが,最近『いい加減なパターン設計,そして,ノイズ対策』しかしてない機器を, 「不要輻射が規格に入らないのは,半導体が悪いのだ!!」と,半導体屋にどなり込むエンジニアが,増えてきた。
 誠に,嘆かわしいことだが,それに対し,右往左往,おどおどしてしまい,対応できない半導体メーカーも,実に,だらしがない!!
 で,こんな場合,少なくとも,機器メーカー側は,不要輻射のデータよりも,もっと基本的で大切な,ノイズシミュレータとか,静電気シミュレータでテストしたデータ,それから,プリント板の現物を携えて半導体メーカーに行き,それらを見せながら,物申すべきだと思う。
 以上,『半導体屋への鬱憤』そして,『回路屋への苦言』……,
長年の著者の心中に,溜っていたモヤモヤした気分をぶちまけて,書いたのが,本書なのだ.
 2001年9月


図1 何んといっても大産業
……ということで,他人のいうことなど,聞く耳など持っていない!!……

図2 昔も今も……ではなく今でも……

図3 どんどん進歩する半導体
……何時かは,ピンだらけになるとは思うが??……



目   次

はしがき

第1章 半導体からは,それほど多くの不要輻射は飛び出ない!!
1.1  昔から,半導体から不要輻射が出ることは,考えられていた●1
1.2  半導体から不要輻射が,「出る」「出ない」を論ずる前に,やらねばならぬことがある●2
1.3  電波が空中に輻射されるのには,それなりの寸法を持った導体が必要●4
1.4  『半導体からはそう多くは不要輻射は出ない』というデータ●7
1.5  クロック周波数の影響●9
1.6  半導体から出る不要輻射を測定するときの注意事項●12
1.7  半導体をシールド板(アルミホイル)などで包んでの再測定●15
1.8  ハーネスから出る不要輻射を,測定するときの注意事項●15
1.9  より一層のコストダウンのためのフェライトコアを取り除く努力●19

第2章 不要輻射対策に邪魔な,半導体の電源ピンと,パスコンのリード線
2.1  「歴史は繰り返す」というのに…●21
2.2  パスコンを半導体のパッケージの内部に●23
2.3  半導体の内部に,パスコンを入れる時代が…(1)●24
2.4  半導体の内部に,パスコンを入れる時代が…(2)●25
2.5  パスコンのリード線は,『太く,短く』●26
2.6  パッケージの電源ピンが,不要輻射に及ぼす悪影響!! ●27
2.7  パスコンの働きを良くするためには,半導体のパッケージのピンの構造を変えろ!! ●31
2.8  「電源ピン」と「アースピン」間のインピーダンス●33
2.9  測定方法に疑問はないか?? ●35
2.10 パスコンだけでも,発生する直列共振●35
    …自己共振とその周波数…
2.11 パスコンの周波数特性が,さらに悪くなってしまう●39
    …プリント板に実装すると…
2.12 同じ1,000pFのパスコンとはいっても…●40
2.13 1,000pFでは駄目!!…というので,100pF●43
2.14 パスコンの自己共振周波数f0は,その姿,形,寸法により,違ってしまう!! ●44
2.15 チップ型のパスコンでは,1GHzはもちろんのこと,600MHzでも対応できないのでは…?? ●45
2.16 「1608型」から「0603型」への移行●46
2.17 煎餅(せんべい)パスコン●47
2.18 0.1μFというパスコン…『0.1μF問題』●50
2.19 『0.1μF問題』の解決には…●50
2.20 コンデンサの規格に,自己共振周波数f0を記載するようにしたら…●52
2.21 クロック周波数が,300MHzというのに「1608型」●53
2.22 パスコンへのパターンを太く短く!! ●54
   …「パスコンの容量」よりも,もっと大切なのが,
   「パスコンへのパターン」…

第3章 半導体の信号ピンから見た入力インピーダンス
3.1  余り影響がない,「信号ピン」のインダクタンス●57
3.2  「信号ピン」のインダクタンスの影響が少ない理由●59
3.3  多少は,細く長くてもよい「信号ピン」●63
    …それに対し,太く短くせねばならぬ「電源ピン」…
3.4  DIP型半導体のピンから見た入力インピーダンス●65
3.5  QFP型半導体のピンから見た入力インピーダンス●69
3.6  BGA型半導体のピンから見た入力インピーダンス●73
3.7  「半導体の入力インピーダンス」と,「コンデンサの周波数特性」との違い●77
3.8  重要なアースピンの位置●78
3.9  ピンの配列の重要性は,「プリント板のコネクタ」でも「半導体のパッケージ」でも,同じこと●80
    …それなのに…
3.10 信号ピンから見た入力インピーダンスの等価回路●82

第4章 死守せよ!!『QFPの真下』を……ベタパターン用として…
4.1  ますますピン数が増える半導体●87
4.2  不要輻射対策上,重要な『QFPの真下』…なのに…●88
4.3  『QFPの真下』こそ大切なのだ!! ということを示すデータ●91
4.4  なぜ,『QFPの真下』が重要なのか?●96
    …交通渋滞を緩和するためなのだ…
4.5  アースとは?? …役に立たないアース…●102
4.6  遠くにあるアースは,アースに非ず!! ●105
    …家庭のコンセントに付いているアース端子も,同じこと…
4.7  筐体アース …昔,昔の古いテクニック…●108
4.8  「ベタパターン」こそ,最良のアース●108
4.9  『QFPの真下』は,「ベタパターン」にせよ!!●109

第5章 BGAを使いこなすのはむずかしい!!
5.1  新しいことに,心引かれるのが人情●111
   …「QFPは古い!!…BGAにしたら」という声…
     …だが,待て!!… 
5.2  企画部とか課が,立案すると…●112
5.3  X線調査に掛る費用●113
    …それが,プリント板自体の価額よりも,高いのだ!!… 
5.4  BGAを搭載したプリント板のX線検査●116
5.5  量産品での検査●120
5.6  不安な『長期信頼性』●122
5.7  心配なBGAのピンのはんだ付けの故障とその修理●123
5.8  はんだ付けの修理●123
5.9  BGA用のソルダレスソケット●129
5.10 不要輻射対策が,むずかしいBGA●129
5.11 不要輻射対策には,不向きなBGA●132
5.12 本章のまとめ135
    …不要輻射対策上,いろいろな問題があるBGA…

第6章 信号用パターンの入力端子から見たインピーダンス
6.1  はじめに●137
6.2  下請け的立場から脱却せよ!! ●137
6.3  プリント板を動作させなくても,測定できることがある
    …測定したデータを,プリント板に添付して納入せよ…●138
6.4  信号用パターンの特性インピーダンスZ0の測定と,その原理●139
6.5  実測データ●145
    …問題は「パターンの曲げ方」と,「ビァ」…
6.6  プリント板に半導体等のすべての部品を,実装した状態での信号用パターンのZ0●149
6.7  信号用パターンの入力端子から見たインピーダンスの問題●149
6.8  重要な,信号ピンの入力キャパシティC0 …なのに…●151
6.9  大きさ以外にも,ぜひ知りたい,入力キャパシティC0に関連するデータ●155
6.10 IBISモデル…(1)●156
6.11 IBISモデル…(2)●157
   …Eye(目)Miss(見落とす)Model(模型,様式)…
    アイ   ミス      モデル
6.12 IBISモデル…(3)●158
6.13 IBISモデルを使ってシミュレートして得られる波形●160
6.14 伝送路を通ると,波形が崩れる!! ●160
6.15 直列に抵抗を挿入して…●166
6.16 実際には,半導体の信号ピンから見た入力インピーダンスが,影響してくるはず●168
6.17 鍋料理にたとえると…●169
6.18 しかし,現実は…●171
6.19 『IBISモデルの値が変化した場合,伝送波形がどう変わるか?』を,知りたい!! ●172
6.20 より簡単なIBISモデルのためのより良い等価回路●173

第7章 不要輻射対策に必要な,半導体のピンの構造の改良
7.1  なぜ,必要なのか?●175
7.2  ピンから先は,わしゃ(われ)知らぬ●175
    …1978年以来…
    …具合の悪いピンの配列…
7.3  半導体の大型化に伴う問題点●177
7.4  心配な,『パッケージ寸法の巨大化』と,電源ピンとアースピンの出し方●178
    …半導体の内部回路を提出させろ!!…
7.5  何とかして欲しい,パッケージのピン構造●180
7.6  心配な,パッケージのピンの間隔●182
    …『線配列(周辺端子型)から面配列(格子端子型)への移行』…
7.7  ますます増えるパッケージのピン…『ピン配問題』●185
    …それに対応するには…
7.8  孔開きパッケージ●188
7.9  凹凸型パッケージ●190
7.10 いろいろな形状のパッケージ●191
7.11 パッケージの上面に,電源ピンとアースピンを…●192
7.12 パッケージの上に,電子部品,半導体,プリント板等々,いろいろな物を載せたら…●193
7.13 パッケージの上面を,プリント板にしたら…●194
7.14 パッケージの上にパッケージを…●196
    …『パッケージの高層化』…

第8章 不要輻射対策のために,必要な半導体メーカーの協力
8.1  直流電源の電流の増大問題●197
    …LSIの電源電圧は,ますます低い方へ…
8.2  パスコンの容量の増大問題●200
    …好ましくない『外付けパスコン』…
8.3  ユーザーが,使いこなせない半導体●204
    …回路設計者のいうことを,聞いてくれない半導体メーカー…
8.4  正規ルートで駄目なら,裏からコッソリ●204
    …でも,それが,却って…
8.5  素直(すなお)にいうことを,聞いてくれる
    半導体メーカーに発注せよ…●207
8.6  ユーザーの要求を,受け入れてくれない半導体メーカー●208
    …そのようなメーカーは,即刻,他社に切り替えろ!!…
8.7  誠にお気の毒な,社内で半導体を製造しているメーカーの回路設計者●209
    …社内の半導体は使用するな!!…
8.8  プリント板のパターン設計でも同じこと●210
8.9  回路に弱い半導体屋さん しかしそんな半導体屋に任せ切りだった回路屋が,もっと悪い!! ●211
8.10 一応は動作はするが,不要輻射の規格に合格しない場合には●213
8.11 絶対に必要な,半導体メーカーとの協力●215
8.12 『推奨パターン図』が,添付されている半導体●218
8.13 半導体にIBISモデルも添付せよ!! ●220
8.14 半導体業界に,もっと回路設計者を…●222
   …ハイテク企業向けの法人税率の引き下げを…
8.15 まとめ●223

目次

第1章 半導体からは、それほど多くの不要輻射は飛び出ない!!
第2章 不要輻射対策に邪魔な、半導体の電源ピンと、パスコンのリード線
第3章 半導体の信号ピンから見た入力インピーダンス
第4章 死守せよ!!『QFPの真下』を…ベタパターン用として…
第6章 信号用パターンの入力端子から見たインピーダンス
第7章 不要輻射対策に必要な、半導体のピンの構造の改良
第8章 不要輻射対策のために、必要な半導体メーカーの協力

著者等紹介

伊藤健一[イトウケンイチ]
大正12年東京都港区麻布に生まれる。昭和20年東京大学工学部電気工学科卒業。昭和20年東京芝浦電気株式会社入社。昭和36年工学博士。昭和46年科学技術功労者表彰受賞。昭和46年全国発明表彰、特別賞受賞。昭和48年機械振興協会賞受賞。昭和50年東京農工大学工学部電子工学科教授。昭和51年紫綬褒章受章。昭和51年拓殖大学工学部情報工学科教授。平成5年同上退職。平成4年イトケン研究所を設立、所長。平成8年(社)日本超音波医学会功労会員。平成9年(社)エレクトロニクス実装学会名誉員
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。