内容説明
本書は、量子論の基礎と本質をきちんと、しかし易しく解説した新しい量子論の教科書。通常の量子論の入門書とは全く逆に、普遍的で一般的な基本原理から始めて、それを具体化し、個々のケースへの応用例に向かうという、いわば川上から川下へ向かう方向で解説していく。これにより、一般の量子論の中で自分が今どこを学んでいるかを常に把握しながら学べるし、先に進むたびに知識を修正する必要もなくなる。そして、易しく丁寧に解説をしたので、このような川上から始める書き方をしたにもかかわらず、全くの初心者や、高校で物理をやらなかった学生でも読める教科書になっている。
目次
第1章 古典物理学の破綻
第2章 基本的枠組み
第3章 閉じた有限自由度系の純粋状態の量子論
第4章 有限自由度系の正準量子化
第5章 1次元空間を運動する粒子の量子論
第6章 時間発展について
第7章 場の量子化―場の量子論入門
第8章 ベルの不等式
第9章 基本変数による記述のまとめ
付録A 複素数と複素ベクトル空間
付録B 行列
付録C 問題解答
著者等紹介
清水明[シミズアキラ]
1984年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修了。理学博士。キャノン(株)中央研究所研究員、同主任研究員、新技術事業団榊量子波プロジェクトグループリーダーを経て、現在、東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻助教授。同理学系研究科物理学専攻助教授を兼担
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感想・レビュー
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浪
12
今まで読んできた量子論のテキストの中で一番わかり易い。一般的な量子力学のテキストを数冊読んで定性的な理解をしたあとに本書を読めば、意味不明な単語の羅列が意味のある文章として読めるようになるはず。ただ、まえがきに高校生や文系の学生でも理解できるように書いたとあるが、それはまあ無理があるだろう。最低でも学部1,2年生レベルの数学(特に線形代数)を学んでいないと本書を読みすすめるのは困難。2020/09/06
Haruki
4
学生時代以来再読。5つの要請を骨組みに古典論とは異なる枠組みとして量子論の枠組みを提示する。ヒルベルト空間上における自己共役演算子として可観測量である物理量を定める。そしてボルンの確率規則として、物理量をある測定値を得る確率分布へと対応させる写像を状態として定める。この状態の時間変化が時間発展であり、演算子の時間発展とみても良いし、状態の時間発展とみても良いし、両方で見てもよい。ベルの不等式だけでなく、フォン・ノイマンの一意性定理やGNS構成法などの基礎的な概念にも触れ、すっきりかつ深い説明が心地良い。2023/06/03
椎茸うま子
4
公理的な量子力学が抜群の分かりやすさで展開される。最初からヒルベルト空間におけるブラケット形式で状態ベクトルを定義して量子力学を組み立てていくので、序盤で線形代数、ヒルベルト空間の数学的な道具立てが続く。そこを乗り越えれば一気に「物理量の観測とその確率分布」に関する議論から量子力学が一般的な形で構成されていって感動。初学者がいきなり公理的な量子力学から入るのは相当きついと思うんで、まずは別の本で具体的な簡単にとける位置表示のハミルトニアン 、波動関数に慣れてから、本書で知識を整理すると幸せになれると思う。2022/03/20
さーど
3
量子論がどのように構築されているかを再確認できる良書。どこまでを公理として認めれば現代の量子論を構築できるかが明確に示されており、読んでいて安心感がある。2018/09/05
わたり
3
♠マーク以外を読んだが、量子論の基礎的部分について他の本ではなかなか書いていないようなことが詳しく書かれていた。第3章を乗り越えればあとは比較的スムーズに読める。♠マーク部分も含めて復習すべきところがたくさんあるので、机の隅に常備してその都度読み直したい。2015/08/09