出版社内容情報
文学にとって昭和という時代は何だったのか? 改元を経て,忘却されようとしている昭和の歴史――.だが,文学のアジア・植民地への責任はいまだ明確には問われていない.戦前から現代までの,様々な文学作品に描かれた異郷の地「満州」の姿をたどることを通じて,壮大な夢と厳しい挫折に織りなされた昭和の精神史を描く.
内容説明
文学にとって昭和という時代はどんな意味を持つのか?改元によって忘却されつつある昭和の歴史―。だが、文学のアジアへの責任、とりわけ植民地への責任はいまだ明確には問われていない。戦前・戦中から現代に至るまでの様々な文学作品に描かれた異郷の地「満州」の姿をたどり、壮大な夢と厳しい挫折に織りなされた昭和の精神史を描く。
目次
序章 釜山から満州へ
1 大陸へ―開拓と建国
2 モダニズムと郷愁―大連
3 偽りと幻の新都―新京
4 民族の軋み―奉天・ハルピン・蒙彊
5 子供たちの満州―故郷という異郷
終章 見ない国境線
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
samandabadra
1
冒頭の作者が釜山の宝水洞でであった古本屋の主人との日本語でのやり取りが印象深い。モンゴル語の辞書を所望され、高かったので日本から会話集を買ってきたが、その時主人がモンゴル、ロシア国境近くの満州の街にいたことを語ってくれたとある。ホロンバイルあるいはハイラルであろう。1982-86年あたりの話なので、古本屋のご主人は生きてはいまい。 文学賞と満州などの植民地文学、民族を描くことなど、興味深いつながりを知ることができる本 あと、津軽方言詩集『まるめろ』の作者高木恭造さんが、満州で文学賞を獲っていて驚いた。2012/12/16
Nick Carraway
0
満州開拓移民と「満州国」建国。それに伴って「大連」で開花したモダニズム、「新京」の浪漫派の活動、「奉天・ハルピン・蒙疆」を舞台に書かれた民族の軋轢を描いた作品の文学賞受賞。とりわけ初期芥川賞受賞作の国策との呼応。現代まで続く「満州国」の亡霊を、文学の面から炙り出した秀作評論である。2020/06/21