出版社内容情報
話題作『青年茂吉』『壮年茂吉』『茂吉彷徨』につづく「斎藤茂吉伝」4部作の完結編.父親である偉大な歌人の最後の輝きと,老い衰えゆく悲しい人間くさい実像を,作家北杜夫が全力を傾注して活写する新しい評伝文学.
内容説明
話題作『青年茂吉』『壮年茂吉』『茂吉彷徨』につづく『斎藤茂吉伝』四部作の完結編。偉大な歌人の最後の輝きを描き出す一方で、老い衰えてゆく父親の悲しいながらもユーモラスで人間くさい実像を、作家北杜夫が身内ゆえに知りえた数多くのエピソードとともに浮き彫りにする。茂吉理解に新しい広がりを供する力作。
目次
1 「小園」「白き山」時代
2 「つきかげ」時代
著者等紹介
北杜夫[キタモリオ]
1927年東京に生まれる。’52年東北大学医学部卒業。作家。歌人斎藤茂吉の次男。父の歌集やトーマス・マンの小説を読み文学を志す。’60年船医の体験をもとに「どくとるマンボウ航海記」を発表、同年「夜と霧の隅で」により芥川賞受賞。’64年「楡家の人びと」により毎日出版文化賞受賞。’98年本「斎藤茂吉伝」4部作により大仏次郎賞受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
フンフン
6
戦時中の大石田疎開中に、あまりにも有名な「最上川逆白波のたつまでにふぶくゆふべとなりにけるかも」ができたんだ。文化勲章のことはもう少し大きく扱うかと思ったが、さらっと当初欠席するつもりだったが、間際になって自ら行くと言い出して、入江侍従に支えられながら進んだとだけ書かれている。茂吉の廃人化進行の描写も、肉親以外は目にすることができないことで、息子であり医師でもある著者にして初めて書き記すことができたと言っていいだろう。2022/04/25
方々亭
2
北杜夫による斉藤茂吉評伝全四巻の四巻目。終戦前後から昭和28年に死去するまでを扱う。北杜夫自身で言うと松本高校から東北大学医学部、そしてインターンの頃で、これから何者になろうかという時期。帰省する度に父親の衰えていく姿を見ている。自分としてはあまり関心のなかった歌人の評伝ではあるけれど、全四巻というボリュームを読み切れたのは、茂吉の強烈な個性と、北杜夫の語り口のためかなと思う。2023/10/20
ゆかっぴ
2
茂吉が老年を迎え死に至るまでを描いている。晩年は痴呆の症状も出ているが、それでも歌を作っている姿もみえる。4冊を通して茂吉が何事にも一生懸命で感情のおもむくままに生きた人であるように思った。私たちは出来上がった作品しか見ないが、それらがどのように生み出されてきたものかが少しでもわかったような気がする。この4部作を書きとおした北杜夫もまた素晴らしいと思う。2011/12/09
Kouji TANAKA
1
茂吉の最期、老人性痴呆、廃人などという言葉が刺さった。祖父母の最期を思い出した。2016/12/21
カミヤイン
1
茂吉の最晩年の頃が、自分の父の姿と重なって(まあそれ程老いては居ないが)、読み苦しかった。2011/12/23