出版社内容情報
歌舞伎作者河竹黙阿弥の死後,長男をさしおき,娘が家を継ぐ.相続や著作権をめぐるトラブルをさばく糸女.やがて坪内逍遥の仲立ちで,養嗣子繁俊をむかえる….綿密な考証のもとに描く江戸-近代の家と人々の変遷.
内容説明
歌舞伎作者河竹黙阿弥の死後、後継したのは娘の糸女であった。女手で実兄との間の相続や著作権のトラブルに立ち向かうが、やがて坪内趙遙を間に立て養嗣子繁俊をむかえる…。黙阿弥の曾孫である著者が、大震災の難を逃れた遺品を端緒に「家」の変遷を辿り、近代の波涛に揺れる芝居界や庶民の生態を如実に描き出す。
目次
1 消えて行く「家」
2 幼年時代の疑問
3 おそめさんと私
4 其水夫婦と糸女
5 糸女「家」を継ぐ
6 糸女の生甲斐
7 趙遙が選んだ養子
8 田舎書生の青春
9 繁俊「家」に入る
10 本所の家
著者等紹介
河竹登志夫[カワタケトシオ]
1924年東京生まれ。演劇研究家。東京帝国大学理学部、早稲田大学文学部卒、同大学院修了。早大名誉教授・文学博士(東大)、文化功労者、オーストリア科学アカデミー会員、日本演劇協会会長、文化庁芸術祭執行委員長。2000年恩賜賞・日本芸術院賞
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感想・レビュー
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MI2
1
歌舞伎の名狂言作者・河竹黙阿弥の家(黙阿弥(新七)・糸女・繁俊・登志夫)の歴史を追ったノンフィクション。もちろん、プライバシーに係る部分等どうしても書ききっていない部分はあるだろうが,法律上の直系卑属である登志夫氏が書く歴史は,作品と比べあまり知られることのない黙阿弥家の歴史をたどる。 黙阿弥のあまりに華やかな七五調の名調子(浜の真砂の・・・など,魚屋宗五郎等を除く)と引き換えに,恵まれているとは言えない「家」を守り続けている人の地道ながらある種美しく,翳りを帯びた日常を描きだしているように思う。2011/12/13
絶間之助
0
河竹登志夫さん追悼の読書二冊目。黙阿弥を継いだ糸女、その養子になった河竹繁俊を尊敬と愛情をもって、切々と書いた文章に心を打たれます。糸女と黙阿弥の門下生達の関係、行動の記述は、江戸から明治時代の江戸っ子って、まさにこうだったのだろうな、と思わせます。実は私の母方のお婆ちゃんは、神田生まれの江戸っ子で、何となく思い出しました。田舎から出てきた繁俊の好対照な性格も面白かったです。さあ、あと一冊。2013/06/19
石橋
0
嵐山光三郎「文人暴食」の中で、「明治文芸界の三婆」というものに河竹黙阿弥の娘糸女があげられていて、糸女に興味を持ってこちらへ。黙阿弥は自ら作った「歌舞伎」が遠からぬうちに形をなさなくなるだろうことはわかっていたと思う。そんな黙阿弥は娘糸女に、また糸女は養子繁俊に、一体どんな「家」を継いで欲しかったのだろうか。2021/12/21