出版社内容情報
「阿部一族」など鴎外の歴史小説は原史料に忠実な形でつづられている.著者は作品と史料とのズレの中に鴎外の創作意図を探り,その歴史小説は,権力と個我との対立の問題を歴史の中に検証する試みであると主張する.
内容説明
「阿部一族」や「興津弥五右衛門の遺書」など鴎外の歴史小説は原史料に忠実な形でつづられている。著者は作品と史料との間のズレに注目して、鴎外の創作意図を探り、鴎外の歴史小説は、権力と個我との対立の問題と、新しい救済の思想としての献身の倫理を、歴史の中に検証しようとする営みであったと主張する。
目次
鴎外歴史小説の史料
興津弥五右衛門の遺書―弁疏と問いかけ
阿部一族―権力と個我
佐橋甚五郎―意地
護持院原の敵討―その時代性について
大塩平八郎―歴史と文学
堺事件―もう一つの構図
「魚玄機」と“新しい女”たち―性と文学への開眼の記録
鴎外との出会い
著者等紹介
尾形仂[オガタツトム]
1920年東京に生まれる。43年東京文理科大学国語国文科卒業。国文学者。東京教育大学、成城大学教授を歴任。74年『蕪村自筆句帳』(筑摩書房)で読売文学賞受賞
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感想・レビュー
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rbyawa
1
k009、乃木将軍の殉死を受けて書き始められたという鴎外さんの作品は当時「高等講談」とも呼ばれたが特に気にするようなこともなく淡々と資料を駆使し現実の風景を折り込み、わずかな描写の揺れにて意思を示すという…渋いなーこれ、ただまあ当時の検閲に引っ掛からないように表現を控える必要があったとされると仕方ないんだけどねー。分析もたまに見るけど分析しないとそこまで面白くは読めないかな。ところで芥川、菊池両者の歴史小説ってなんでメルクマール確定なんでしょう、鴎外さんもだけどこの三人だけピックアップしてるのよく見る…。2020/01/24