講談社学術文庫<br> 不機嫌の時代

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講談社学術文庫
不機嫌の時代

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  • サイズ 文庫判/ページ数 282p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784061587212
  • NDC分類 910.26

内容説明

日本の近代文学者を広く襲い、その内面を覆った影のひとつに“不機嫌”という気分があった。生きることにまつわる苦痛、不安、鬱屈等々の、とらえどころのないもやもやした雰囲気を、鴎外、漱石、荷風、直哉らの作品を通し、これを「人間生活の根本的な状態」という特別な意味をこめて独創的に把握した。近代的な自我形成の歴史の流れのなかで、不機嫌を20世紀の人間学のきわめて重要な概念として細密に描きわけた長篇文芸評論。

目次

不機嫌の自覚―志賀直哉
その時代―荷風と漱石
気分の構造―鴎外
「私」と「公」の乖離
感情の自然主義
『それから』の時間
『明暗』の行動
傍観と自虐
不機嫌と実存の不安

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

tetuneco

2
不機嫌は感情ではなく、その人を包み込む気分の1つ。2010/06/21

いりちゃん

1
説明しづらい感情、苦痛などを「不機嫌」という言葉で表現し文豪それぞれが同様の感情を書物にしるしているとの評論。2020/12/22

原玉幸子

1
明治維新以降の近代自我の目覚めから、体制や文化の変化を経て日露戦争後の喪失感に繋がり、夏目漱石他同時代の小説から抽出されるそれを「不機嫌」と定義した著者の有名な評論です。不機嫌も近代自我の一部と解せば、冒頭の萌芽を日本の実存主義と定義することと大きな差異はありませんが、(『存在と時間』を意識していると思われるハイデガーからの引用もある)西洋との比較然り、近代自我の目覚めをもう一歩掘り下げ、違う言葉で表現し考察したことに著者の凄さを感じます。(因みに、本書は入手困難でした。)(◎2017年・秋)2020/02/20

KN

1
日露戦争後の日本を支配した「不機嫌という気分」を主題にした名著。急激な近代化によって、江戸時代の世界は壊れ抽象的な公と私に分裂した。近代化という国家目標にまい進することでごまかされ続けてきたこの裂傷が、日露戦争勝利による緊張の弛緩により人々の気分を侵し始める。漱石も鴎外も荷風も直哉も、この不機嫌という気分を共有していたのである。アトムと化した個人が陥る「感情の自然主義」を批判し、感情は公的な形式によって規定されていなくてはならないと説く箇所などは、著者の面目躍如といえる。2018/02/27

Gen Kato

1
「不機嫌とは、一方で強く孤独に憧れながら、しかも他人との結合を求める矛盾した衝動の共存なのである」……漱石、鷗外、荷風、直哉を「不機嫌」から読み解く評論。「過度の純粋化といふことは、しばしばものごとの本質を逆に破壊する」、「趣味といふものは、人間の長年の努力によつて人工的に作られる」など、唸らされる名言多し。2016/05/24

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