内容説明
われわれを取り囲む文化とは、巨大な記号の体系に他ならない。言語においても単語はそれぞれの意味をそなえた記号であり、それらが集まってできる文は複合的な記号となる。想像力ないし創造力を駆使して微妙な言語現象を分析・解読するレトリックの認識こそ、記号論のもっとも重要な主題なのである。言語学を越えた〈記号論としてのレトリック〉の領野を呈示した著者のレトリック研究の集大成の書。
目次
認識とイメージのレトリック
創造性としてのレトリック感覚
自分だけのものでない言語
「らしさ」について
ことば
強調の記号論へ
言語と逃れ去る文学と〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
aiaimo`olelo
16
言葉の有限性を無限にしてくれる、魔法のようなレトリック。レトリックに関するエッセーなどをまとめたもので、この手の本の中では比較的読みやすい。 昔、日本語が苦手な外国人が、返却期限を忘れたことに関して一生懸命書いてくれたFAX「大変申し訳ないです。切腹してお詫びしようと思いましたが…」これも立派なレトリックの1つであったことを知り、彼女のことを久しぶりに思い出した。元気にしているといいなぁ。 私は言葉が大好きなのだが、こうしてますます言葉の深遠に恋して嵌っていくのであろう。2020/09/23
ヘラジカ
10
「感覚」と「認識」に次ぐ三部作目か?と思うとそうではない。過去に発表された論文やエッセイを纏め上げたものである。従って書き下ろしではないので、主題が一貫しているわけではない。後半は記号論についてあまり触れられていなかったのが少し残念。紙面に限りがあった為か、いくつかの文章には物足りない感じがあるものの、大半はレトリックの深遠なる可能性に触れた素晴らしい論文であった。最も興味深かったのは「広告と文学のことばの形」。前2冊とは違って、勉強になるというよりは好奇心や知的探求心を刺激される書という感じかな。2014/03/28
じゅん。
7
時間や看板…当たり前に僕らはそれが指し示す物ややそれの概念を信じ行動してるが、それらは文化に根ざしたもの。その様な、いわばその地域ならではの「記号」に沿って行動したり思考したりしてるってことを考えさせられる本でした。2021/03/30
黒澤ペンギン
6
記号の作用を、言語におけるレトリックと似た仕組みであるという考えに基づいた本。「レトリックは発見的認識への努力に近い。」想像力や創造力を広げ新しい視点に立つ努力であるレトリックはやはり面白がって使っていくべきだ。(p55)最近までおおげさな言葉を使うのに抵抗があった。正しくないことは嘘だから言ってはいけないという思いによるものである。しかし強調の記号論への章を読めばそんな憑き物がとれた気持ちになる。(p74)2021/12/21
非日常口
5
コードとレトリックに関するエッセイ集で、目新しいものはなかったがパラパラ眺めて自分の内奥に少しずつ降り積もらせておくと良いように感じた。2013/07/17