内容説明
危ない訓示に始まる珍妙な一日を描く「時は変改す」など、鉄道にまつわる楽しい随筆を集める。
目次
見送り
一等車
立腹帖
旅愁
風稿録
曾遊
官命出張旅行
非常汽笛
汽笛一声
一等旅行の弁〔ほか〕
著者等紹介
内田百〓[ウチダヒャッケン]
1889‐1971。小説家、随筆家。岡山市の造り酒屋の一人息子として生れる。東大独文科在学中に夏目漱石門下となる。陸軍士官学校、海軍機関学校、法政大学などでドイツ語を教えた。『冥途』『旅順入城式』『百鬼園随筆』『阿房列車』など著書多数。1967年、芸術院会員推薦を辞退。酒、琴、汽車、猫などを愛した。本名、内田栄造。別号、百鬼園
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
49
子どもっぽく、すぐに腹を立て、でも汽車に乗ると機嫌が直ってしまう百閒先生。「阿房列車」とあわせて読むともっと面白いと思う。このころの列車の旅って、いいですね。2016/05/18
へくとぱすかる
42
内田百間と言えば、『阿房列車』が有名だが、これはその他の鉄道関係の作品を収録。1933年から、何と1970年に及ぶ。鉄道80年にあたり、東京駅の一日駅長を引き受けたはいいが、発車させる特急の展望車に自ら乗って行き、職務を放棄!(笑) 訓示の文章が、これまた爆笑ものである。よくこんなの書いたな。ともあれ、元祖乗りテツである百鬼園先生の、鉄道マニアとしての面目躍如。楽しくてノスタルジックで旅情あふれる、鉄道ファン必読の文学だ。明治の鉄道風景の思い出から、最後にはディーゼル機関車の試乗まで、決して飽きません!2015/02/18
とびほびこび
41
満を持しての百閒先生登場。タイトルからステッキを振り回し「ぶるぁ」と猛り狂う姿を想像したものですが、内容は鉄道の旅を中心に描かれた短編で、ボイに対するあたりが少し強いくらいwで概ね和やかに読めました。偏屈王と借金王の異名を欲しいまま(?)にした先生ですが、何気ない列車から見た景色も何故だか味わい深さを感じます。これも氏の感性が豊かなればこそ。最後に謎かけを、「内田百閒」とかけて「列車の旅」と解きます。その心は「気っ風(きっぷ)がいいでしょう」・・おーい、とびほびこびの座布団全部持ってけー!2015/03/29
かわうそ
9
阿房列車同様の汽車の旅と、マニアックな鉄道関連の話題を取り扱った別冊阿房列車的な随筆あれこれ。鉄道と旅を愛する気持ちは勿論、飄々としながらも情の深い人柄が垣間見えるような作品もあって興味深い。ちなみにそんなに立腹してないです。2013/06/27
ウミネコ
4
百閒先生のアンソロジーで「立腹」がテーマだなんて十八番にも程があると思ってわくわくしながら読んだ。ただ、読んだことのあるものが多かったほか、百閒先生の随筆そのものが立腹帖みたいなものだから、なんというか、特別なアンソロジーというより、普通の百閒先生の随筆集だった。あと、これもやはり百閒先生で、鉄道の話が圧倒的に多かった。百閒先生の立腹は単なる怒りではなく、ユーモアと皮肉と時に悲しみと、色々な雑味が織りなすものである。だからこそ強い人間味が感じられる。巻末に見送亭夢袋氏の文があったのもよかった。2022/02/02