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ちくま新書
太宰治 弱さを演じるということ

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  • サイズ 新書判/ページ数 218p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784480059673
  • NDC分類 910.268
  • Cコード C0295

内容説明

没後既に五十年以上、なお太宰治の小説を手にする若い読者が多い。大ロングセラー作家なのだ。「青春のはしか」といわれ、だれでも一度は読まねばならぬがいつまでも読むのは未熟とさえいわれながら、いつの時代にも若い読者を引きつけてやまぬその秘密はどこにあるのか。「極端に自己を否定して、万人を楽しませよう。もし救いがあるとすれば、自分はその最後のものでなければならぬ。これが彼の倫理なのです」という評に代表される従来の太宰像を、ことばで人間関係を作りなおす方法の体現者と読み替える斬新な試み。

目次

第1章 なぜ「太宰治」なのか
第2章 メタ・メッセージの希求
第3章 「太宰治」の誕生
第4章 「ナンセンス」の美学
第5章 ことばで距離を創るということ
第6章 「心中」の論理
第7章 「女類」とは何か

著者等紹介

安藤宏[アンドウヒロシ]
1958年東京都生まれ。東京大学文学部を卒業。上智大学に7年間勤務したあと、1997年より東京大学大学院人文社会系研究科助教授。専門は日本の近代文学。太宰治の自意識過剰の饒舌体に着目するところから出発し、そのような文体が育まれていく必然性を近代文学の展開の中で明らかにすることに主眼を置いてきた。筑摩書房国語教科書編集委員
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヒロミ

38
太宰の作品の根底にはディスコミュニケーションと家父長制への抵抗と庇護されたい願望の問題があり、戦時下の太宰が驚くほどの佳作を残したのは太宰が国家に「父」の役割を投影したゆえの安定がそれをもたらしたのだ、とする第5章が印象的だった。敗戦により無惨に滅びゆく「父=日本」の喪失体験したことにより太宰は均衡を保てなくなってしまった。厚い本ではないがしっかり読み応えのある新書。太宰は人間関係に擬似家族の投影をしてしまっていたのだなあと本書を読み感じた。太宰は最期まで家長の立場を引受けることを恐れていたのだろうか。2015/08/26

ラウリスタ~

9
ちゃんと書かれてあるらしいことは分かる。のだけれども、日本近現代文学研究の射程ってこんなものなの、という印象を受ける箇所がいくつかある。いまや西欧文学の教養がなくとも日本文学を語れるからか、ときに驚くほどに素朴すぎる著者の感想が漏れ出している。新書という制約上、分かっていることでも、知らんぷりをしてとぼけているだけだと信じたい。もしそうでなければ、安藤氏の扱う「文学」ってものがあまりにも平板なものに見えてしまう。2015/06/10

mstr_kk

8
10年以上ぶりに再読。話があちこち飛びがちなのと、記述があっさりしているのとで、強烈な太宰像が提示されているという印象ではないのですが、興味深い視点は多いと思います。2016/03/21

rou

7
良い。同意。自分を守る為のコミュニケーションの取り方、父権の喪失を客観的に分析。以前人づてに聞いた吉本隆明の太宰論(講演)における企みについて少し思い出すが、スキャニングして返したのでまた機会があれば読みたいかも。ただ、太宰を読むことの限界みたいなもの感じざるを得ないかな。2019/02/27

たりらりらん

6
没後50年以上たつにも関わらず、現在も読みつがれている太宰治の書について考察する。現代と太宰治の間には、無用に傷つくことを恐れるという共通点があるのではないか。太宰における道化は、孤高をつくりあげるだけではなく、傷つくことに過剰に鋭敏であったがゆえに、防衛としてたちあらわれている。私たちは、言葉は関係をつくっていくものと考えることが多いように思うが、言葉によって隔たりをつくっているという著者の指摘は興味深い。同著書の『自意識の昭和文学ー現象としての「私」』も読んでみたい。2010/09/09

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