内容説明
短い詩一つの中に隠れている深くて広い世界、人間の心と暮らしのさまざまな在りよう。その秘密の扉を開くためのノックの仕方。詩の世界を楽しむための入門書。
目次
第1部 詩の基本的要素(イメージ中心の詩;音の響き中心の詩;考え(思想)中心の詩
第四の(追加的)要素―漢字、ひらがな、カタカナ
詩の動き―さまざまな要素の響き合い
寄り道―詩の歴史をほんの少し)
第2部 日々を生きつつ―さまざまな詩(家族;巣立ち・恋;結婚;子どもの誕生;再び家族へ;社会;巻を閉じる前に)
著者等紹介
柴田翔[シバタショウ]
1935年生まれ。作家、ドイツ文学研究者。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。1964年に『されどわれらが日々―』で第51回芥川賞を受賞。以後も作家活動の傍ら、東京都立大学、東京大学文学部でゲーテを中心にドイツ文学を教える。1995年から10年間、共立女子大学文芸学部教授として、演習「詩を読む」などの授業を担当した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ🍀
168
詩の読み方は人それぞれ、自らを思い出しながら、響く言の葉から浮かぶ景色を大切にして、ときに立ち止まり、ときに大きく踏み出していく。人は完璧であり得ないことを誰しも知っているのに、それを目指す努力を求められる。その重みの彼方にある思いがけない何かを探し続ける。ひとときの恋、長い道のり、鮮やかな記憶。閉じ込めた思い、痛みや苦しみ、胸もとで眠るはじける笑顔。今を生きている。桜の花びらのように私たちの思いは幾重にも重なり、落葉にそっと耳を傾けながら遠い旅立ちの日を静かに思う。少し立ち止まって詩を読んでみませんか。2023/01/28
たち
28
本棚、発掘本です。常日頃、殺伐とした本ばかり読んでいるせいか、妙に心に沁みました。たまには、じっくり詩を味わうのもいいですね。特に三好達治、小野省子、俵万智の詩が良かったです。2018/03/19
chacha子
15
イメージと音と、痛々しいほどに誠実な思い。これら三つの輪は膨らんで交叉して、唯一無二の小宇宙を作り出す。言葉と言葉は音叉のように響きあい、吸いつきあって丸く小さな世界を此岸に浮かび上がらせる。軽やかな語り口で詩なる小宇宙を悠々と泳いでいく著者に手を引かれ、おっかなびっくりついていくのがなんだかとても心地よい気分。2016/09/15
きりさめ
3
詩を読むときに自分の勝手な解釈で読みがちだけれど、それに嵌まらないようするために必要なことが書かれていて、とても勉強になった。イメージ中心の詩の例としてあげられている原民喜の詩がとても良い。2021/03/25
きざはし
3
国語の時間には捉えどころのなかった「詩」。当時、これほど懇切丁寧な詩への道しるべがあったなら。それとも、その後積み重ねた年月が詩を読めるだけの感受性をもたらしたのか。 テキストの自由な解釈が支持される傾向が強い昨今、「『自分の我意』を持ち込んではいけない」とする著者の主張は好ましい。2010/10/24