出版社内容情報
少女アグネスが、家庭教師として自立し、副牧師と結ばれるまで――ブロンテ家、末妹の代表作。
内容説明
不幸や困難に次々と襲われても、アグネスは決して自分の信念を曲げない―ひたむきに生きる少女の成長を描いた秀作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
61
家計が傾いた牧師館に生まれ、家庭教師として自立を志すヒロインの成長と恋愛が描かれる自伝的要素の高い作品。序盤での勝手なことばかり言う上流家庭の親と乱暴な子供(特に鳥を虐げる場面が印象に残った)に対して孤軍奮闘する様、牧師への静かで情熱的な恋愛描写などは迫真で、著者の実体験や客観的な審美眼が多分に生かされた内容になっている。その強い信仰心や、生真面目さもあって終始堅苦しさがあり、姉たちのようなロマンティックさはないものの、恋に対する喜び、夢、期待などは、うまく言葉に出来ないもどかしさが行間から伝わってくる。2018/06/23
viola
5
シャーロットとエミリの妹アン・ブロンテによる『アグネス・グレイ』。姉二人があまりに偉大すぎて、アンは正当な評価を得てこなかった・・・・等指摘されていましたが、読んでみるとやっぱり姉二人と比べてかなり劣っているという印象があります。(解説って大抵その本を褒め称える傾向がありますし)単刀直入に言うと、つまらない。ガヴァネス文学という観点から見ると重要でしょうけれど、つまらない。リアリズムというよりも、単に雇い主をろくでもないように描いて読み手をイライラさせるだけにしか感じられませんでした・・・。2012/08/12
tekka
3
姉のシャーロットより先に家庭教師になったせいか、雇用主及びその家族への描写は姉よりも辛辣。二人の姉の作品と比べると確かに地味ではあるかもしれないが、対象を容赦なく突き放す視点から生まれる描写は非常に力強く、読んでいて心地いい。訳者による解説も充実した内容なので、気になった人は是非読んでほしい。2022/09/04
きりぱい
3
人の話を聞く役ばかりで言いなりとはいえ、心には確固たる意志を持っているところは、『マンスフィールド・パーク』のファニーのようでもあり、『ジェイン・エア』に寄るようでもあるけれど、ちょうどそれらからユーモアを差し引いて、抑揚も情熱も奪って地味にした感じ。と書くと面白くなさそうだけど、家庭教師の実態が前面に出て、二つの家庭で経験する葛藤と忍耐に、やがて差し伸べられる愛情を思うと心をほっとさせる何かが残る。2010/06/09
おばこ
2
アグネスに感情移入してハラハラドキドキしました。地味だけど味わいのある感じの装丁、手触りの良い頁々、単行本の良さを堪能しました。現代と変わりのない人々の賢さ、愚かさを感じました。ブロンテのEの上に点が二つついているのは何故なんだろう。2018/03/11