内容説明
南北朝時代の武将。足利尊氏の子に生まれながら認知されず、長門探題に任じられて下向途中で父尊氏の命を受けた軍勢に襲撃され、九州に逃亡。尊氏が誅伐命令を出すなか、九州・中国地方を転戦。一度は尊氏を京都から追い出したが、敗れて再び中国地方を放浪し、石見での長い隠棲生活の果て没した。その波瀾の生涯と激動の時代を描き出す本格的実伝。
目次
第1 歴史への登場
第2 西国への下向
第3 観応の擾乱
第4 孤立化する直冬
第5 望みなき戦の日々
第6 中国地方への転進
第7 上洛と没落
第8 終焉への道
著者等紹介
瀬野精一郎[セノセイイチロウ]
1931年生まれ。1957年九州大学大学院文学研究科修士課程修了。早稲田大学名誉教授
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感想・レビュー
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こきよ
59
歴史とは、やはり細部こそが面白いというのがよく分かる一冊であろう。戦国時代とは応仁の乱以降という一つの定義があるが、足利家という、この日本史上稀に見る〝迷家〟が尊氏という傑物を得て、表舞台に登場した事こそが、その萌芽なのではないかとさえ、読後思い至った。2014/08/31
金吾
24
尊氏の気持ちもわからないではないですが、直冬からすればたまったものではなく、また特に昔は息子か否かはなかなかわからないのでこのような関係になりがちだろうと思いました。直冬についてはあまり知らなかったので、軌跡を追えて良かったです。ただ書かれ方もきつい部分がありました。2023/10/17
bapaksejahtera
12
足利尊氏の庶子長男とされる。数え19歳の時僧籍にあった彼は尊氏に面会を求めるが恐らくは正妻日野氏の実子義詮の存在から尊氏は面会を拒否する。彼は実子として生涯認められなかったが、直後実子のない直義の養子になり武将として立つ。後の観応の擾乱では直義の側として九州で戦う。南朝や九州での勢力争いの間隙を縫い生き延びるがその後没落して石見で密かに死ぬ。本書はその評伝である。類書に乏しいため本書に頼らざるを得ないが、説明無く高師直親子の「悪行」等と述べる等やや独断の書きぶりあり文章もこなれぬ。時代の雰囲気は分かるが。2021/09/03
MUNEKAZ
4
足利直冬の評伝。養父・直義以外に確たる支持基盤を持たない存在のため、国人衆を味方に引き入れることに汲々としており、最終的には山名氏や大内氏の離反で勢力が崩壊するのもさもありなんという感じ。また尊氏・義詮の対抗馬として皆から持ち上げられ、抗争を繰り広げた前半生の密度の濃さと、利用価値がなくなり見放された後半生の薄さのギャップも印象的。74歳で亡くなった人物だが、実質的に語られるのは19歳から41歳の間だけである。2017/04/29
さとまる
2
生い立ち的に可哀想だなぁと思っていたけど、「将の器でもないし、一武将としてもその名に値しない」など結構ボコボコに書かれている。結局は養父である直義の政治的敗北と早すぎる死が、直冬の敗北にもつながっているんだなぁ。2019/03/23