内容説明
映画『意志の勝利』『オリンピア』の監督レニ・リーフェンシュタール(1902~)。その伝説的映像は、ナチの美的イメージとなって、いまも論議が絶えない。ベルリンに生まれ、新舞踊のダンサーから女優へ。ヒトラーの庇護を受け、ドイツ第三帝国の栄誉をになう映画人になる。戦後はナチ「同伴者」として非難を浴びるが、やがてアフリカのヌバ族や海中をテーマに写真家として復活する。本書は、レニの映画をナチの宣伝だと断罪しつつもその芸術性は認める通念を超え、20世紀をとりまく「美」の状況を問い直す。レニの映像の圧倒的な力はどこからくるのか。今日、「美」が作用する根底には何があるのか。多彩な資料を駆使し、レニの生涯と仕事、美学と時代のかかわりに迫る碩学の力作評論。
目次
第1章 生の軌跡(幼少のころ;モダンダンスへの道 ほか)
第2章 レニ・リーフェンシュタール製作の映画(『青の光』―山岳映画と表現主義;『信念の勝利』―映像によるナチズム神話の提示 ほか)
第3章 映像に昇華されたオリンピック(『民族の祭典』;『美の祭典』 ほか)
第4章 リーフェンシュタール作品と20世紀美学(ヴァイマル文化からナチズムへ;美学の政治化と政治の美学化 ほか)