出版社内容情報
川端康成、村上春樹、吉本ばなな、山本昌代、尾崎翠の作品を臨床心理学や精神病理学などの学問成果を援用し、解読。従来明らかにされにくかった<自己>像に迫る新批評集。
内容説明
本書は、自己危機・自己溶解というものが、どのような出来事として生起するのか、言い換えれば“わたし”という幻想が何によって支えられ、どのような糸に開かれ/閉ざされているのかを、現代文学というテクストに拠りながら解き明かそうと試みたものである。
目次
視覚の揺らぎ―川端康成の“目”
淋しい身体、浮遊する台所―吉本ばなな「キッチン」論
ふと気づく“わたし”―吉本ばななの時間・身体・言葉
チーズ・ケーキのような“緑”の病い―村上春樹「ノルウェイの森」論
闇の中の白い鳥―山本昌代の家族小説
受苦と幻声―山本昌代の兆候感覚
匂いとしての“わたし”―尾崎翠の述語的世界
教室の中の“わたし”―臨床文学教育の試み
著者等紹介
近藤裕子[コンドウヒロコ]
1953年生まれ。現在、札幌大学法学部助教授(日本近現代文学・教育学専攻)
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感想・レビュー
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佐島楓
66
文学を・・・特に純文学を志す書き手は、多かれ少なかれ自分の中に問題を抱えているのだと思う。本書で取り上げられている作品は、「キッチン」や「ノルウェイの森」など象徴的な物語ばかりだけど、物語以上のつらい思いをしないと出てこない言葉や文章というものも確かに存在するのだろう。2016/10/24
take0
3
2003年刊行。本書で扱われるのは川端康成(の作品における視覚の問題について)、吉本ばなな(「キッチン」「満月」)、村上春樹(「ノルウェイの森」)、山本昌代(「九季子」他)、尾崎翠(作品に特長的な「匂い」をめぐって)。著者は作品中の登場人物に離人症、統合失調症、PTSDといった精神疾患の特徴や共通性を見て、臨床心理学等の言説を援用しながら考察していく。2018/10/21
都子
1
川端康成、吉本ばなな、村上春樹の箇所のみ読了。非常に面白い。村上春樹は苦手だが、近藤さんの読みでぐっと面白く読めそうな気持ちになった。2016/08/31