出版社内容情報
数多くの資料と証言に基づき、強制動員の規模や実態をコンパクトに示す。真の問題理解と解決のために。
内容説明
元徴用工の慰謝料請求権を認めた韓国大法院の判決は、なぜ画期的かつ正当と言えるのか。問題に正面から向き合うため、そして被害者を救済し、尊厳を回復するために必要なこととは―動員の全貌、過酷な実態、実質的な補償を拒み続ける政府の欺瞞、そして“解決済み”論の不当性を明らかにする。(附録資料:朝鮮人強制動員企業現在名一覧)
目次
第1章 朝鮮人強制動員の経過(徴用工とは;募集による動員;官斡旋による動員;徴用による動員;日本への労務動員数;軍務動員数)
第2章 朝鮮人強制労働の実態(企業文書からみた動員;行政文書からみた動員;企業への強制動員―日本製鉄と三菱重工業;証言から見た強制労働)
第3章 被害回復のない戦後処理―未払金供託・日韓請求権交渉(返還されなかった未払金;日韓請求権交渉;「すべての請求権」とは;不当な「救済なき権利」論)
第4章 韓国徴用工判決の意義(韓国大法院の徴用工差し戻し判決(二〇一二年)
光州地方法院の三菱名古屋判決(二〇一三年)
韓国大法院徴用工判決(二〇一八年)
日本政府の対応
植民地合法論批判)
第5章 植民地責任をとるために(強制労働は歴史的事実;基金の設立による包括的解決を)
著者等紹介
竹内康人[タケウチヤスト]
1957年浜松市生まれ、歴史研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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とよぽん
33
国と国の問題で、日韓協定で解決済み、ではなく、個人の請求権は消滅していない。ならばどうするべきか、竹内康人さんはハッキリと答えを出している。道理にかなった明解答だ。しかし、安倍政権は問題をすり替え、誠意のひとかけらもない対応(仕打ち)に終始。本当に、この国は戦後処理を誤り、それを一向に修正しようとしない。ドイツを見習えと言いたい。条件の良い働き口を勧められて日本にやって来た朝鮮人(まだ13歳ぐらいの少女もいた)、令状を見せられ日本に連行された人も。国策会社という言葉に出会って、今さらながら驚いた。2020/02/27
coolflat
16
日韓請求権協定では「すべての請求権」に関して「いかなる主張もすることができない」と記された。ここでの「すべての請求権」とは、対日請求要項に示された財産請求権や、日本側の拿捕漁船に関する請求権などを示す。そして当時の日本政府の請求権協定での「解決」に関する解釈は、政府の外交保護権の相互放棄を意味し、個人請求権を消滅するものではなかった。つまり日韓請求権協定は、あくまで財産の請求権に関する政治の外交保護権を解決させるものであり、強制動員という不法行為への慰謝料請求権を消滅させることはできなかったのである。2020/12/10
Toshi
3
約80万人の強制連行、強制労働から韓国大法院の徴用工裁判の意義まで、私の様によく分かってない人には絶対の必読書。反人道的扱いを受けた被害者の尊厳回復の視点の全くない、逆に日本の裁判所も認め、教科書にさえのっている史実を強制ではなかったと反論する安倍政権をはじめとする輩に腹わたが煮えくりかえる。被害者はどんなにやるせないことか。恥を知れー!カス!2020/07/03
YUTAKA T
2
日本政府は朝鮮人徴用工を使った各企業に朝鮮人への未払い金を供託させていたんですね。はじめて知りました。1950年の段階で、朝鮮人への未払い金の合計が2億3700万円もあったんですね。それを日本政府が各企業に対して朝鮮人徴用工への未払い金を供託させます。朝鮮人一人ひとりの未払い金額を明示した名簿が作成されたので、日本政府としては朝鮮人徴用工に未払い金を渡す準備を完全に終えていたのに、日本政府はこの供託関係の資料を韓国側にみせずに、秘密にしたまま終わり、経済協力にして終わったんですね。2021/04/06