出版社内容情報
維新政権が打ちだした神仏分離の政策と,仏教や民俗信仰などに対して全国に猛威をふるった熱狂的な排斥運動は,変革期にありがちな一時的な逸脱にすぎないように見える.が,その過程を経て日本人の精神史的伝統は一大転換をとげた.日本人の精神構造を深く規定している明治初年の国家と宗教をめぐる問題状況を克明に描き出す.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
69
本書を読むまでは廃仏毀釈とは、明治政府内の神道狂信者による排仏だけだと思っていたのだが、本書によってその蒙を啓かされた。まずは国民に対する新たな価値観の意味付け、国学者による神道の再編、キリスト教問題、少し読んだだけでもこれだけの意味が込められている事を教えられる。他にも廃仏が政府主導で行われたのではない事や、廃仏が行われた地域の例、それに対する真宗の抵抗とその影響等も詳しく説かれていて読んでいて目を離せない。明治維新が政治的なだけではなく、意識においても価値観の転変である事を思い知らされる一冊であった。2018/10/07
レアル
58
前回読んだ『廃仏毀釈』に続いて読んだ本。『廃仏毀釈』は経緯、実情を主軸に描かれていたのに対して、こちらは思想からその課題にメスを入れようとしている。明治という新しい時代は国民に何を新たに植え付けようとしたのか、その結果どの様な過程で神仏分離、そして廃仏毀釈へという道へと進んで行ったかがここに描かれている。歴史の一幕といえばそれまでだが、信仰、宗教という括りで鑑みると、私たち日本人にとってそして社寺にとっても、これほど大きな一幕はなかったかもしれない。2019/08/07
さぜん
46
明治維新後の神仏分離令により廃仏毀釈が行われた。国を統一するため神道国家を目指した政府の宗教統制は人の心までは縛れず、お粗末な顛末を迎える。ただ、お上の言う事に忖度し積極的に寺院と仏像を破壊していく行動は現在にも通じている。歴史を知り事実を知る。そこから未来を作る作業が必要だと感じる。2022/02/23
樋口佳之
44
日本のばあい、近代的民族国家の形成過程は、人々の生活や意識の様式をとりわけ過剰同調型のものにつくりかえていったように思われる。神仏分離にはじまる近代日本の宗教史は、こうした編成替えの一環であり、そこに今日の私たちにまでつらなる精神史的な問題状況が露呈している2020/08/26
masawo
39
新権力の樹立に際し、明治政府が強引かつ恣意的なやり方で宗教体系をコントロールしようとしてきた軌跡を史料を元に生々しく描く。一部地域で行われた、どう考えてもバチ当たりな廃仏政策からそれに対抗する真宗の逆襲に至るまで、ついつい仏教サイドに肩入れして読んでしまった。今後神社を見かけたら「ついこないだまではお寺だったんじゃないの」と疑ってしまう気がする。2022/06/26