出版社内容情報
原子を見ることすらできない時代になぜその存在を理解できるようになったかを科学史的に記述した本.単なる歴史的な解説ではなく,それぞれの時代の科学者の探求のなかに,物理的に思考するとはどういうことかを織り込みながら解説する.ときに自分たちで実験しながら仮説と事実との関係を深く考える教育の本としても魅力がある.
内容説明
原子の存否をめぐる永い永い論争の歴史。単なる歴史的な解説ではなく、ガリレイからアインシュタインまで、それぞれの時代の科学者の探求を自ら実験で再現しながら、だれが原子の決定的な証拠をみたかを追っていく。物理的に思考するとはどういうことかを考える上で、おおいに示唆を与えられる本。
目次
第1章 ブラウンの発見
第2章 原子論のはじまり
第3章 大気と真空
第4章 気体の構造
第5章 反応する分子
第6章 とびまわる分子
第7章 分子の実在
著者等紹介
江沢洋[エザワヒロシ]
1932年、東京に生れる。東京大学理学部物理学科卒。東京大学理学部助手、米国メリーランド大学、イリノイ大学、ドイツのハンブルク大学を経て学習院大学教授。その間、米国のベル研究所研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まじぇすた
9
大人向けの啓蒙書と思ったら子供(小学生〜高校生)向けの本だった。古今の「アトム」にまつわるお話だが、天下り的な説明は一切ない。疑問・考察・推論がとても自然で、まるで一緒に議論をしているかのように理解が進む。著者たちも実験したり、誰もが自然に思い付く考察から理論の試行錯誤を繰り返しながら、現在確立している理論や関係式を発見的に導く。ただ残念なのは、ここから単位だよと知らせる記号 / が、分数の記号 / と同じように書かれるので慣れるまで戸惑う。ブラウン運動について色々説明しているのが個人的にツボだった。2017/02/10
かしゃるふぁ
5
どのように原子論が確立されていったのかを高校生にも分かるように丁寧に説明している。この本が普通の啓蒙書と異なる素晴らしい点が2つある。1つ目は、著者自らが実験を行い、その実験方法・結果を記載していることだ。「昔の科学者が~という実験を行ったところ、~という結果を得たから...だ」だけでなく、「今の道具で実験しても確かに...となるのだ」ということが書いてあるだけで、その説明への実感が増す。良い点の2つ目は、数式を使って読者が実際に計算して大雑把でもいいから値の目安が求められるようになっていることだ。2013/10/22
ようすけ
4
ブラウン運動という取っ付き易い不思議から読者を惹きつけそのまま数世紀に渡る物理の旅へ引きずり出される。内容はしっかりと勉学に励んでいる高2以上の学力が必要かと。難しいことを飽きさせずにとの工夫が随所にみられます。 え、私?当然理解出来ませんでしたよ(笑)良本です。★★★★☆2014/02/11
村崎未夢
3
素晴らしい良書。原子という概念が、いかに考えられ、受け入れられていったかをテーマに据えた科学史の本。内容は平易だが深い。なにより全体を通して「物理学マインド」を教えてくれる。高校生なら十分読める。大人が読んでも学びが多い。みんなにぜひ読んでもらいたい。2017/02/21
しろっこー
3
テーマは目に見えない原子の実在性。無機質な高校の教科書より歴史的な動向が知ることができて読みやすいし、突然統計的な手法が出てくる分子運動論の数学的なところを丁寧に解説しててとてもよい。2015/09/03