出版社内容情報
ユングはなぜ超心理学、錬金術、宗教など神秘主義的なことを取り上げたのか。そのラディカルな思想に真正面から取り組んだ知的評伝。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
molysk
65
私の一生は、無意識の自己実現の物語である。――心理学者ユングの自伝は、このような序文ではじまる。本書は、ユングの生涯における出来事や思想を追って、作者が読み解きを深めていく。心理学の理論がその提唱者の人格と不可分であるならば、ユングは自己の中で意識と無意識が対立と結合を繰り返すような、複雑な性格をもつ人物であったのだろう。後半生に興味をいだいた錬金術や宗教といった神秘主義的な対象も、自らの魂にとって現実と感じられるものを追い求める、という意味では、生涯変わらぬ姿勢を貫いたと理解することも可能であろう。2022/11/06
ころこ
47
このシリーズはテクストの読解がメインで、思想家の生涯を紹介することによって、当時の時代とそこで陶冶された人格がどの様に思想をつくっていったのかを示すことが各著者の腕の見せどころですが、著者が依頼に応えていない本です。ユングといえば河合親子ということで執筆依頼があったのでしょうし、当時はユングといえば現代思想とはみなされてなかったはずですので、双方に無理があったのかなという気がします。近接した性的な隠喩を持ち出すフロイトよりも、ユングのどこか飛躍のある象徴性の読解の方が可能性を感じますが…2022/01/15
加納恭史
22
ユングの曼陀羅(マンダラ)の話は私は二十年前には理解できなかったが、今回河合隼雄と河合俊雄のユング派の親子の共同研究により、理解が進む。二人の研究は岩波現代文庫の沢山あるコレクションのシリーズで詳しく調べられる。この本の魂の現実性(リアリティー)でユングのタイプ論の元となる魂(自我と自己)の生涯における研究のあり方が解る。端的に現れるのがユングの臨死体験だな。また子供の頃からの夢体験も一生の研究課題であった。脳科学者のジル・ボルト・テイラー著「ホール・ブレイン」で彼女が如何にユングに傾倒しているかが解る。2024/03/16
rootstock1998
3
ブラジル旅行中に少しずつ読みほぐしていった。つい先日友人から借り受けた村上春樹と河合隼雄の対談での『ねじまき鳥クロニクル』が取り上げられているし、何か不思議な縁を感じている。 内容的に面白かった部分では、人間と人間がつながること、それが「感情的結合」でありしかもその関係というのは多分に投影を含んでいるとしてその投影を捨て去っていく必要性というのは頷けた。そして、その上で投影がなくなった時何も残らないのではなく、それら関係も否定されることがないということ。ここに僕自身のリアリティがあった。2018/02/01
dinosaurism
2
ユングの著書を読まずに最初にこの本を読んだ。 元々ユングの著書を読む気はなかったが、読みたくなるような本。2019/03/23