内容説明
死に顔がもっている威厳と迫力に魅せられ、万国博に対抗して葬儀博の実現にかける「ガンめん」。葬儀のレジャー産業化に狂奔する「ジャッカン」。とむらい師たちの奇行と愚行、笑いと哀しみ。独自の終末観に基づいて「生」を肯定する「死」への想像力が発揮される。他に異色作「あゝ水銀大軟膏」「四面凶妻」「ベトナム姐ちゃん」「うろろんころろん」を収録。
著者等紹介
野坂昭如[ノサカアキユキ]
1930年鎌倉市生まれ。50年早稲田大学文学部仏文科に入学し、七年間在学。音楽事務所勤務、コント台本作成、作詞等に従事。63年「エロ事師たち」発表。68年「アメリカひじき」「火垂るの墓」で第58回直木賞受賞。80年「四畳半襖の下張」裁判で有罪確定。83年参議院議員当選、同年総選挙に田中角栄元首相の地盤・新潟三区から立候補し落選。97年『同心円』で第31回吉川英治文学賞受賞。2002年『文壇』およびそれに至る文業により第30回泉鏡花文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
shizuka
21
追悼野坂昭如氏。ガンめんの葬式博覧会、楽しみにしてたのに残念だったな。葬式についてここまで死者の立場にたって考えてくれる人ももういないだろう。でもガンめんらしい最期だった。穴からうまれ、穴へ還っていったんだ。『とむらい師たち』『ああ水銀大軟膏』『四面凶妻』『ベトナム姐ちゃん』『うろろんころろん』の短編5話。『四面凶妻』はえげつないママ。お行儀悪いからチッチ飲む羽目に。『ベトナム姐ちゃん』切ない愛のお話。『うろろんころろん』どこまでが現実か。魑魅魍魎の世の中その道があってもおかしくない。野坂さん、次!合掌。2015/12/11
康芳英
0
「うろろんころろん」の全編下ネタ全開のどうしようもなさは野坂作品の特徴であるラストの斜め上の展開が逆にまともに思えるほど酷い。「おさえチンと申しますと」「おさえねえと、きついわやくのチン、チンにはこの他、すだれチン、けんいちチン、つまみチン、はさみチンとありんす」じゃないってーの。おかげで表題作の「とむらい師たち」の坂道を転がり落ちていくように超展開を見せてある種落ち着くところに落ち着くラストの衝撃も「ベトナム姐ちゃん」のやるせなさと哀愁漂うラストも全部が吹き飛んでしまいましたわ。2012/05/03
reiko@SIGNATURE
0
表題作のみ読了。死を(そして生を)真に重大に受け止めることは、ただ穢れ・畏れの源と認識できる者のみに与えられた特権であろう。戦争も災害も知らず、昨年豪奢な葬儀を祖母にささげただけの私にとって、死はまだ清浄なメロドラマとしての側面が大きい。若さって残酷。2010/06/10
ぼんくらげ
0
「おくりびと」が下らないエンターテイメントに思えるね。2010/01/25
nomaltricky
0
表題作は傑作! 霊柩車で高速道路をブッ飛ばし、乞食坊主を雇って街中をパレードする。アナーキー・イン・ザ・葬儀屋。終盤は宗教団体を設立して大儲け。もうメチャクチャ。ハリウッドで映画化希望。2009/09/23