出版社内容情報
信州に生まれ育ち、信州の風土に根ざした作品を発表した映画監督・熊井啓(1930-2007)。著者は戦中戦後の青春時代を回顧して、その体験が自己の映画の核になっていると語る。社会派映画の巨匠の原点がここにある。
内容説明
信州に生まれ育ち、信州の風土に根ざした作品を発表した映画監督・熊井啓。著者は太平洋戦争末期から戦後にかけての青春時代を回顧して、その体験が自己の映画の核になっていると語る。旧制松本高校から信州大学へ、そして独立プロから日活撮影所へ。正義と真実を追究し続けた社会派映画の巨匠の原点がここにある。
目次
1 幼年時代(誕生頃のこと;赤い布団 ほか)
2 小学生時代(入学の頃;我が街は緑なりき ほか)
3 中学生時代(松本中学校に入学する;初代校長・小林有也氏のこと ほか)
4 松本高校・信州大学文理学部時代(旧制松本高校文科に入学する;嗚呼青春―旧制松本高校 ほか)
5 信州の自然と文化(信州・青春の山々;深まる秋の上高地 ほか)
著者等紹介
熊井啓[クマイケイ]
1930‐2007年。映画監督。代表作に「サンダカン八番娼館 望郷」(ベルリン映画祭銀熊賞)、「千利休 本覚坊遺文」(ヴェネチア映画祭監督賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬弐仟縁
8
松本に住んだことがあるようである(44頁)。今も町並みは整備されつつあるが、当時は、落ちついた風情のある街であって、白壁土蔵や黒瓦の旧家があった模様(56頁)。桜の似合う城下町の描写もニクイ(74頁~)。今の深志高校の中等部のような中高一貫試験のようなのは口頭で学力検査していたようだ(134頁~)。昔の深志は2日かけて10科目入試科目を設定していたとは・・・。そりゃ優秀だろう。生物、地理、化学、歴史、国語、漢文、物理、数学、英語、公民。2013/05/31
コカブ
1
信州出身の映画監督・熊井啓が書いた地元時代の自叙伝。昭和5年生まれで、戦前戦中に育ち、高等教育は戦後に受けた世代だった(ちょうど旧制学校から新制学校への移行期)。父は豊科町吉野の地主熊井家出身で、そこは中世の館跡だという(吉野町館と思われる)。一方、母親は女学校の数学教師で、この時代には珍しく、公職について働く女性だった。熊井が幼いころには豊科に住んでいたが、姑との反目もあり、松本に転居した。父親は役員を務めていた甲信明社製糸が倒産したため借金取りに追われたが、母親は借金取りを追い返したという。2016/07/03