出版社内容情報
日本語は日本人として生まれた者たちの独占的所有物ではない。「コトバ=民族」という単一のイデオロギーに反して、外国人が「日本語を書く」ということは、せつなくも本物の<越境>行為だ。日本語を母国語としない西洋出身者で日本語による作家としてデビューしたアメリカ人の、体験的日本語論と<越境>をめぐる鮮烈なエッセイ。
内容説明
「コトバ=民族」という概念に反し、外国人が「日本語を書く」ということは、せつなくも本物の越境行為だ。日本語を母語としない西洋出身者で初の日本文学作家となった俊英による体験的日本語論と万葉集から現代の最先端に至るまで、表現の生命を探し求めた鮮烈なエッセイ。西洋語から非西洋語へと越境した著者の経験は、日本語はすべての人に開かれているのだという実感を、私たちのものとする。
目次
1(ぼくの日本語遍歴;塀の外で;想像への畏敬―大和路をゆく;伝記なき先駆者たち―表現そのものの歴史;日本語を書く部屋;言霊の再発見;「日本にいる」ことのアイロニー;日本語の「所有権」をめぐって;「世界文学」から「ワールド・フィクション」へ;「表現のことば」新たな輝き)
2(太宰治、「津軽」への旅;安部公房の「満洲」;大庭みな子の「アメリカ」;文学にとって「原爆」とは何なのか:女の「戦後文学」;“談話”『古事記』はひとつの奇跡である;大江健三郎のノーベル賞・夜話;日本語のスケールに触れたとき:司馬遼太郎の「新宿」;「和訳」された大陸;乖離と「アイデンティティ」―「在日」を見直す)
3(越えてきた者の記録;野茂英雄、あるいは「越境」の勝利;新宿へ、アジアの都市へ;越境の時代;特快列車に乗って;北京語の聞こえる部屋)
著者等紹介
リービ英雄[リービヒデオ]
1950年アメリカ生まれ。少年時代を台湾、香港で過ごし、67年に日本に初めて住む。その後日米往還を繰り返し、プリンストン大学大学院博士課程修了、プリンストン大学、スタンフォード大学で日本文学の教授を務める。四〇歳直前から日本に定住し、日本語による作家として活躍。92年、『星条旗の聞こえない部屋』(講談社)でデビュー。西洋世界から非西洋世界へ越境した書き手として注目される。主著『天安門』『千々にくだけて』(大佛次郎賞)『仮の水』(伊藤整文学賞)(以上、講談社)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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