内容説明
『竹取物語』は、竹の中から誕生した美少女かぐや姫をめぐる求婚譚であり、仮名で書かれたわが国の最初の物語。永遠の女性に憧れる思いを描いて、日本人に今日まで永く愛読されてきた。『伊勢物語』は、一代の色好みにして歌人である在原業平の奔放な恋愛を、哀切な歌の調べと簡潔な地の文により描いた歌物語。著者の訳文は、原文の雅さをよく伝えながら、ユーモラスな味わいを出して、現代の小説を読むように楽しめる。
著者等紹介
田辺聖子[タナベセイコ]
1928年、大阪市生まれ。小説家。樟蔭女子専門学校卒。64年、『感傷旅行』で芥川賞受賞。93年『ひねくれ一茶』で吉川英治文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
73
面白かったです。昔古文で馴染んだ物語をこうしておせいさんのユーモアある訳文で読むとまた世界が広がりますね。2018/04/15
Mijas
52
【古典を読む】田辺聖子さんの現代語訳は楽しい。『竹取物語』では、かぐや姫の「つんとした」キャラクターが際立ち、ユーモアを交えて「恥すて」「魂さかる」「あえなし」「たえがた」「かいがない」話を「わははははは」と語る。今までの竹取物語のイメージと違った。かぐや姫は天の羽衣を着せられた途端、人間の喜怒哀楽の感情や欲望が渦巻く「穢い人間世界」とあっさり決別する。原文は一部のみ掲載。カラーの図版があり、小林古径の描いた竹林や青い富士が印象に残った。『伊勢物語』も田辺さん訳による「男」の心情を和歌が味を効かせている。2017/03/03
❁Lei❁
21
日本文学の源流二作を、田辺聖子の雅やかな現代語訳で。千年前の作品なのに、いま読んでも胸をぎゅっと締めつけられます。かぐや姫のいない世を嘆いて不死の妙薬を焼く帝に、姫を担いで逃避する業平。平安時代の男たちのイケメンぶりにクラクラします。お気に入りは業平の「月やあらぬ」の歌。去年と同じ月を見ても、恋しい人が隣にいないだけですべてが変わったように感じられる、と。ままならぬ恋をこんなにも情趣たっぷりに表現できるなんて、古典はやっぱり面白い。両作からは既に、現代の「エモ」に通じるものを見出すことができると思います。2024/03/23
yuki
9
『から衣/きつつなれにし/つましあれば/はるばる来ぬる/たびをしぞ思ふ』—伊勢物語・都鳥2015/02/10
bookshelf_yt07
8
日本最古の物語「竹取物語」と在原業平が主人公の「伊勢物語」の現代語訳。 竹取物語は、かぐや姫に求婚する5人の皇子が難題に挑む姿ってこんなにも滑稽だったのかと驚いた。一方、伊勢物語は業平の恋話だけでなく、男の友情や藤原氏への僻みもあり、イメージが覆った。高校の時に読んでいれば…。2021/05/25