内容説明
『枕草子』は、日本の代表的な随筆文学。各章段のテーマは、自然、儀式、文学、宮廷内の事件と、作者清少納言の旺盛な好奇心の趣くまま、様々である。物事への好悪のはっきりした個性と、鋭敏な感覚、連想を次々に繰り出し、リズミカルな文体で書き継がれ、読む者を飽きさせない。千年前のひとりの女性の偽らない心の動きは、今もなお新鮮である。大庭みな子の訳文は、作者の息遣いを伝える、彩り豊かなものになっている。
目次
四季の美しさ(第一段)―春はあけぼの
中宮がお産のために(第八段)―大進生昌が家に
命婦のおとどという名のねこ(第九段)―うえにさぶらう御ねこは
清涼殿のはなやかさ(第二三段)―清涼殿の丑寅のすみの
女の生き方(第二四段)―おいさきなく
興ざめなものは(第二五段)―すさまじきもの
いやな、にくらしいもの(第二八段)―にくきもの
どきどきするもの(第二九段)―こころときめきするもの
過ぎた日の恋しくなつかしいもの(第三〇段)―すぎにしかた恋しきもの
七月のある朝のこと(第三六段)―七月ばかりいみじうあつければ〔ほか〕
著者等紹介
大庭みな子[オオバミナコ]
1930‐2007年。小説家。東京都生まれ。津田塾大学学芸学部英文学科卒。1967年、『三匹の蟹』で芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KEI
38
教科書以来の枕草子(現代語訳ですけど)。教科書と違い平安貴族の暮しの描写も多く堪能した。清少納言の立場など歴史的背景を知ってると更にわかり易い。1200年前の元祖あるあるを書いているところと、宮中の華やかな暮し(男女の機微など結構あからさまに書いてある)が短い文章で書かれあきさせない。もっと早く読めば良かった。2024/02/28
カーミン
32
今月滑り込みの1冊!現代語訳だけど、「枕草子」を通して読んだのは初めて。とても千年前に書かれたとは信じがたいほど瑞々しい。上級女官から見た自然や儀式、宮廷内のことなどなど、今の人が読んでも「あるある!」とうなずくと思う。大庭さんの訳で、千年前の人間たちが生き返って踊り出すような気がした。再読、絶対あり!2023/03/31
あきあかね
24
『上品に美しいもの。薄紫に白いかざみ。雁の子(かるがもの卵)。けずり氷に甘茶をかけて新しい金の碗にいれたさま。水晶の数珠。藤の花。梅の花にふりかかった雪。いちごを食べる美しい幼児。』 枕草子と言えば、やはりものづくし。鮮やかな色彩、イメージの奔流に魅了される。 久しぶりに枕草子を読み返して改めて感じたのは、清少納言の文章の、繊細で絵画的な美しさ。日の沈んだ山際にまだ光が残り、赤い夕焼け空に、うすい黄色の雲がたなびいているさま。月の明るい夜に牛車で川を渡る時、水のしぶきが水晶の割れたようにくだけ散って輝く⇒2019/12/20
鐵太郎
19
今年の大河(光る君へ)の影響か、関連する本が多いんだな。抄訳ですが、久しぶりにきちんと編集・翻訳されたバージョンを楽しみました。なるほど、自然とか身近のさまざまな生活の描写を美しい文章で記していると共に、才気あふれる口の上手い女性が男社会の平安貴族のサロンでどのように評判を取っていたのか、どのように楽しんだのかが描かれていますね。ところで、中宮定子が失脚したあと宮廷を離れた清少納言の葛藤の原因って、結局何だったんでしょうね。生意気すぎて浮いたから? それとも?2024/02/09
翡翠
14
抜けている段もあるようだけれど、枕草子を通して読んだのは初めて。清少納言のスパッと風景や物事を切り取る感性の良さは素晴らしい。大庭さんの現代語訳も瑞々しくてよかった。2021/12/19