角川新書<br> 文系学部解体

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角川新書
文系学部解体

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  • サイズ 新書判/ページ数 240p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784040820514
  • NDC分類 377.21
  • Cコード C0237

出版社内容情報

社会の即戦力となる人材の育成、本当にそれは大学の役割なのか。

文部科学省から国立大学へ要請された「文系学部・学科の縮小や廃止」は、文系軽視と大きな批判をよんだ。自ら考える力を養う場だった大学は、いつから職業訓練校化したのか。

教養を身につけ、多様性を受け止める場だった教育の現場が新自由主義の波に晒されている。競争原理が持ち込まれ、その結果もあいまいなままにさらなる効率化が求められ、目に見える成果を求められている。そもそも教育の成果とはなんなのか。すぐに結果が見えるものなのか?

著者は、この問題が静かに、そして急速に進められつつあった当初から問題を指摘してきた現役の大学教授。「中の人」として声を上げたブログは、10万アクセスにも及んだ。著者が所属する学科は、今回の要請で一方的に「廃止」を宣言されている。1990年代に当時の政策で新たに創設された新設学科だったが、教員たちの尽力もあって、いまや受験生に人気の学科となっていた。にもかかわらず、一方的に廃止が告げられたのである。

その決定に率直に憤り、今や瀕死といっても過言ではない教育の現場を嘆きながらも、大学の存在意義を感じ、希望を見出そうとする著者。大学への希望を見出そうとする思いにあふれた渾身の書。

◆はじめに  大学がいま大変なことになっている
突然の大騒ぎ この本を書くことになったわけ

◆第一章  国立大学改革プランの衝撃――文系学部はいらない?
極めて短期間に決定された<ミッション> 大学・日本学術会議の反発 事実とかけ離れた文科省の反論 ねらいうちされた教員養成系大学の新課程 片手間学科からの変貌 一貫性のない教育政策

◆第二章  大学改革はいかに進められてきたのか
さまざまな「大学」の誕生 一九九一年の大事件 少子化の中でなぜ大学数増加? 遠山プラン――大学の構造改革 競争原理は植えつけられたのか 大学のソビエト化 空疎な学長のリーダーシップ 文科省から突然降ってくるお金の正体

◆第三章  戦前の大学と戦後の大学
国家による大学統制 旧制大学とは何か? 新制大学の誕生、変わらない格差 研究者を養成する大学/職業教育をする大学/教養を身につける大学 「新課程」の廃止 福井県では文系学部が消滅? 経団連の文系擁護発言の真意

◆第四章  大学が崩壊する
『溶解する大学』 スキマとしての大学の崩壊 自然科学者がリードする大学改革 大学教員とはどんな人たちか? 緩やかな動物園から管理される場へ 博士の大量生産

◆第五章  大学をどうやって守っていくか?
カントの大学論――二つの知 教養部の解体と教養教育の衰退 教員たちは研究時間を奪われている タコ壺化は文系だけなのか 教員と学生とが共に創る共創空間としての大学 異質なものとの出会いで学生が変身 大学でしかやれないことをやりたい

◆終章  それでも大学は死なない
ポストモダンと<知>のステイタスの変容 国家をなぜ歌わせようとするのか? 世界の大学の変化 学生たちの気質の変化 大学は死なない

あとがき

内容説明

文部科学省から国立大学へ要請された「文系学部・学科の縮小や廃止」は、文系軽視と大きな批判を呼んだ。自ら考える力を養う場だった大学は、いつから職業訓練校化したのか。学科の廃止を告げられながらも、教育の場に希望を見出す大学教授による渾身の書。

目次

第1章 国立大学改革プランの衝撃―文系学部はいらない?
第2章 大学改革はいかに進められてきたのか
第3章 戦前の大学と戦後の大学
第4章 大学が崩壊する
第5章 大学をどうやって守っていくか?
終章 それでも大学は死なない

著者等紹介

室井尚[ムロイヒサシ]
1955年3月24日、山形市生まれ。横浜国立大学教育人間科学部教授。京都大学文学部卒業、同大大学院文学研究科博士後期課程修了。帝塚山学院大学専任講師などを経て、92年から横浜国立大学助教授、2004年から現職。01年には「横浜トリエンナーレ2001」で全長50mの巨大バッタバルーンを含む複合アートを制作、11年にはクシシュトフ・ヴォディチコ氏を招き、学生たちと新作プロジェクション・アートを制作するなど、ジャンルを超越した分野で活躍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

masabi

19
文系学部の見直し、実質的な廃止に対する異論。大学の輩出する人材と社会・国家の求める人材のミスマッチが問題の根底にありそうだ。企業はグローバル化に対応した即戦力のような人材を、大学はどのような人材の育成に力を入れているのだろうか。筆者は文科省のやり方にも、かといって問題を単純な二項対立として理解し、本質を見ようとしないマスコミにも怒っている。かといって昔のままの大学が良かったといえばそれは違うと思う。2016/02/09

C-biscuit

18
図書館から借りる。タイトルが刺激的である。内容は国立大学が国からの要請で 「産業に役立つ学部に注力せよ」に対する反論である。本を読んで感じることは、冒頭に著者が書かれている通り、「人は自分の経験を通してしか物事を測れない。」ということであり、民間企業で働いていると当たり前とも思う。もっとも大学という教育機関であるので、乱暴な当てはめはできないが、私立大学の運営ももっと選択と集中が進んでいるようにも思う。人材の多様性については、大賛成であり、特徴ある教育、教養はイノベーションを起こすことができると感じる。2016/02/10

to$hi

16
何がまずく、誰が悪いのやら。政治も悪い、官僚も悪い、勿論大学自身も悪い。声をあげて批判が出来ないのであれば、しょうがないと諦めるのではなく、せめてやれるだけのことはやるだけしかない。「無知との戦い」、「無思考との戦い」は絶えず続けていかないといけない。2015/12/31

Riopapa

15
考えていた以上に文系学部は追い詰められた状態。自分が学生だった30年前はのどかだったが、ちょうどその頃から変化が始まっていた。今、理系の学校に勤務しているが、理系の先生方も研究費を減らされ、外部資金獲得に必死。日本の高等教育は瀕死の状態。2017/06/11

軍縮地球市民shinshin

15
近年の文科省の大学行政の迷走ぶりと、それに直接振り回される国立大学の内実がよくわかった。「社会の役に立つ」学問だけがもてはやされ、その対極にある哲学・文学・歴史学などの人文科学が国立大学から撤去されようとしている。文科省もそうだが大学に「すぐ役に立つ」ことがりを要請する企業や日本社会がその根源にあると僕は思う。現に理系に比べれば文学部生の就職先などないではないか。また高度経済成長後、学部特性を無視して「文系ならば営業」というアタマしかない企業こそが、こういった考えをやめない限り文学部はなくなるのである。2016/02/24

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