1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころりんぱ
46
他の国がどうかは知らないが日本人は自分の国の歴史をあまりにも知らなすぎると思う。敗戦後にガラッと教育が変わったからとはいえ、学校の教科書で教わる戦争だけじゃ不十分だと思う。この巻は開戦から終戦まで、それこそ太宰治、三島由紀夫、川端康成…と、いろんな作品が詰まっていてとても贅沢だった。圧を感じるものが多くて満足。確かに私は歴史を知りたいから読むのだけれど、否応なく生死と向き合ったり、人間の理性や感情が深く描かれたりする、戦争を描いた作品の真摯さが好きなんだなと、浅田さんのあとがきを読んで気づいた。2016/10/18
黒豆
9
「戦後からの眼差し」をテーマとしたⅣの4作品が素晴らしい。川端康成の「生命の樹」。戦争が素材となっているにも関わらず、女性の心の微妙な趣や詩情を感じる自然が描写され、川端康成の世界に浸れる。三島由紀夫の「英霊の声」。神がかりになった神主を通じて、英霊が慟哭する。天皇への激しい憤りに、背筋が凍るような思いがした。吉村昭の「手首の記憶」。大きな事件の陰に、小さな悲惨な事件がいくつも存在することに気付かされた。蓮見圭一の「夜光虫」。祖父が孫に語る戦争の記憶。最後の一文は、短編集を締めくくるのにふさわしい。2014/10/21
Louis
3
この巻も戦争とはどういうものなのかを、あらゆる角度から伝えてくれました。開戦時の気持ちの高揚から、祖国を遠く離れた現地の悲惨な状況まで、まるでそこに自分が存在していたかのようでした。 どれも傑作ですが、一番強く印象に残ったのは三島由紀夫の「英霊の声」でした。正しいとか正しくないの話ではなく、日本のためにと思って亡くなっていった方々の強い念みたいなものが滲み出ていました。三島由紀夫が後年右翼の世界に進んでいったのも頷ける気魄のある作品でした。2023/09/03
西野西狸
3
吉村昭さんの小説が一番ぐっと来た。戦争のことはあまり話したくないという人がいるが、それがひしひしと伝わってくる。2014/06/15
勝浩1958
3
野間宏著『バターン白昼の戦』、火野葦平著『異民族』、中山義秀著『テニヤンの末日』、梅崎春生著『ルネタの市民兵』、大城立裕著『亀甲墓』は重量感たっぷりの戦場の雰囲気を活写していて、その悲惨さが悲しい。島尾敏雄著『出発は遂に訪れず』は特攻作戦で死を覚悟した作者が、敗戦によってとにかく生き伸びたことを知ったときの心の動きが生々しい。多くの秀作のなかで際立っていたのが、三島由紀夫著『英霊の声』である。三島氏は二・二六事件への天皇の激怒や敗戦後の”人間宣言”に絶望した。「などてすめろぎは人間となりたまいし」は強烈。2013/08/20