内容説明
幼い頃から双子の姉妹のように育ったロズとリル。二人は今、各々息子と孫娘を連れて、光る海の見えるレストランのテラスで、昼下がりの幸福なひと時を過ごしている。だがこの何気ない家族の風景にはある秘密が隠されていた…。互いに相手の息子との恋(?)に落ちた二人の女性の心の葛藤を描いた表題作の他に、「ヴィクトリアの運命」、「最後の賢者」、「愛の結晶」の三つの作品を収録した傑作短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こばまり
44
映像化作品で興味を持ち初レッシング。「THE GRAND MOTHERS」は映画では「TWO MOTHERS」と若返り、邦題では「美しい絵の崩壊」と情緒的になる。収められた4編を通して感じるのは、何かしらの居心地の悪さと人生の短さ。読後には自らの来し方行く末にも思いを馳せてしまいました。これも小説の醍醐味か。2016/01/31
tona
11
レッシングは微妙な男女関係を描くのも上手いが、女同士の関係を書かせてもピカイチ。表題の「グランドマザーズ」は、コレットの『シェリ』を思わせる2組の母子をめぐる美しい小説。個人的には、「ヴィクトリアの運命」がお気に入り。"進歩的な"上流中産階級の一家に憧れながら、"Know your place."と言わんばかりの社会の中で、一応もがいてみるも結局這い上がれない。せめて、色の薄い娘だけは…といった具合に矛盾を抱えながら分裂した英国社会が、非常に巧妙に描かれている短篇。2014/05/29
sabosashi
9
今回も読むのに異常に時間がかかった。よっつの長い短篇、あるいは中篇小説とでもいえばいいのだが、その一つひとつに時間の長さが組み込まれていて、あっさり読み過ごしては申し訳ない気持ちでいっぱい(単なる言い訳だが)。 (1)「グランド・マザー」母子関係、というより母系家族のことを綿密に紡ぎ出す。母子関係というと通常の心理学が描く典型的なもののひとつ。でもそんなパターンをあっさりと乗り越え、人間関係の可能性へと旅だっていく(または閉塞していく、どちらも大差はないかもしれない)2021/12/13
りつこ
5
表題作がすごく好きだ。ショッキングでどろどろした内容だけれど、読後感はどこか爽やか。きっと作者が彼女たちを肯定しているからだと思う。2009/09/14
みき
4
それをそうと意識する前に全部受け入れられるのが、女性性のどうしようもないところかもしれない。どの舞台も美しい描写で、そのどうしようもなさの悲惨さも、これはこれで生きている上で起こっている、幸せにも似たことなのだ、とへんな納得感がある。面白かった。2019/04/23