内容説明
五感のうちでも、最も記憶と結びつきやすいと云われる嗅覚。『失われた時を求めて』に代表されるように、その感覚を表現した文学作品は数多い。小説のなかの魅力的な匂いと香りを楽しむことは、読書という行為をより豊かなものにする。「におわないこと」が重視され、嗅覚を使う機会の減った現代だからこそ、香り立つ文章の楽しみ方を伝授する。
目次
第1章 人の身体の匂い
第2章 香水と花の文化
第3章 異国の匂い―巴里
第4章 異国の臭い―上海
第5章 匂いと嫉妬
第6章 湯と厠とこやしの臭い
第7章 発酵と美味しい匂い
第8章 記憶と幻臭
第9章 木と雨と空気の匂い
第10章 言葉と香り
著者等紹介
真銅正宏[シンドウマサヒロ]
1962年、大阪府生まれ。神戸大学大学院単位所得退学。徳島大学総合科学部助教授、同志社大学文学部教授を経て、追手門学院大学国際教養学部教授。専攻は日本近現代文学。2016年、博士(文学、神戸大学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
くさてる
13
嗅覚という切り口から文学テキストを読み解いていく内容ですが、小説に偏らず、エッセイまで幅広く取り上げています。森茉莉「甘い蜜の部屋」を香りという観点から分析していく箇所がとても面白かったです。2020/04/08
CBF
4
(★★☆☆☆) 五感のうちでも、最も記憶と結びつきやすいと云われる嗅覚。『失われた時を求めて』に代表されるように、その感覚を表現した文学作品は数多い。小説のなかの魅力的な匂いと香りを楽しむことは、読書という行為をより豊かなものにする。「におわないこと」が重視され、嗅覚を使う機会の減った現代だからこそ、香り立つ文章の楽しみ方を伝授するー。 テーマ自体は面白かったけど、取り上げられてる小説で知ってるものが少なかったため(村上春樹の数作品くらい)、取り上げられてるシーンの前後の文脈が分からないものもあった。2021/03/21
aof
4
文学の中で「香り(匂い)」を読むのが好きだ。感覚の中でも、言葉だけで共有するのはかなり難しい部類だろう嗅覚。その難しさに立ち向かうよう並べられた言葉はとても豊かだ。 現実でも、匂いは実体であって、実体でない。その曖昧な揺らぎが魅力なんだと思う。2019/11/21
yo_c1973111
2
文学(小説)に登場するにおいや香りの表現をpick UPし、その譬喩を解析しようとするもの。臭覚は記憶と最も結びつきやすいと聞いたことがあるが、そういった起点から書かれているものだろう。扱う文学はほとんどが近代(大正、昭和初期)で、そこはなぜだろうと思う。他にもにおい、香り表現が出てくる本はあるだろうと思う。が、すべてを把握するわけにもいかないか。’二律背反’という説明言葉がよく出てくるが、必ずしも二律背反ではないような気がする。2020/05/21
ハル
2
匂いを想像して当時の記憶を呼び戻すのは結構難しい。 でもふとした瞬間に同じ匂いに嗅覚が刺激され、記憶が鮮やかに蘇ってきておセンチになることはよくある。2020/03/07