内容説明
なぜフロイト以降の精神分析はアドラーの理論に近づいているのか?フロイトの生前の理論の変遷、自我心理学、クライン学派、対象関係論、カーンバーグやコフート、さらにポストモダンと呼ばれる精神分析理論を幅広く概観しアドラー心理学の持つ先見性を明らかにする。
目次
第1章 精神分析の基礎理論
第2章 初期精神分析とアドラーの決別
第3章 精神分析とリアルな人間関係
第4章 性の問題について
第5章 意識と無意識
第6章 共感の位置づけ
第7章 劣等感をどう見るか
第8章 アドラーと現代精神分析(特に自己心理学)、ポストモダンの精神分析
著者等紹介
和田秀樹[ワダヒデキ]
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学国際フェロー等を経て、国際医療福祉大学大学院教授、川崎幸病院精神科顧問、和田秀樹こころと体のクリニック院長。日本在住の精神分析医として、唯一、自己心理学の国際カンファレンスで口演を行い、また自己心理学の年間優秀論文を集めたProgress in Self Psychologyに日本人として最初の論文と二本目の論文が選ばれるなど日本における自己心理学の第一人者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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はすのこ
9
良書。フロイトとアドラー。両者の理論の違いと変遷を詳細に説明している。2016/02/13
田中峰和
1
「嫌われる勇気」はベストセラーで空前のアドラーブーム。書店でもアドラー心理学関係の本をコーナーとして並べている。この本はアドラーを専門としない精神科医の著者が調べなおして執筆。なぜフロイト以降の精神分析がアドラーの理論に近づいているのかを解説する。フロイトの時代以降の初期精神分析の変遷をたどりながら学べるが、精神分析そのものに興味がない読者には、自我心理学とかクライン学派、カーンバーグやコフートなどの学説は一読では理解困難だろう。アドラー人気の秘密はその理論が他者だけでなく、社会を重視しているからなのか。2015/12/13
かがみ
0
アドラーの個人心理学の解説書というより、現代精神分析全体を概観するような本。さすがに語り口はわかりやすい。深層心理学の各学派の理論体系の相互比較など、時代状況なども参照しつつ解説されており、ユング派や認知行動療法の立場から読んでも、得るものは多い。コフートのいう自己対象転移関係とアドラーの共同体感覚はかなり重なる部分があるのではないか。それにしても、こうして俯瞰すると、ユングの立ち位置の独特さが一層際立つ。2015/12/11