出版社内容情報
著者が青年期から強い影響を受けてきた宮沢賢治について、機会あるごとに生の声で語り続けてきた三十数年に及ぶ講演のすべてを収録した貴重な一冊。全十一章。
内容説明
著者が青年期から強い影響を受けてきた宮沢賢治について、機会あるごとに生の声で語り続けてきた三十数年に及ぶ講演のすべてを収録した。賢治にとっての「ほんとう」とは何か。生涯を決定した法華経信仰、独特の自然観や倫理の問題までが、ふかく掘り下げられている。その時々の関心の深化と拡大によって、次々と切実なテーマが取り上げられ、重層化していった過程を鮮明に映し出す、貴重な一冊。
目次
１ 宮沢賢治の童話について
２ 宮沢賢治の世界
３ 宮沢賢治の陰―倫理の中性点
４ エリアンの詩とうた
５ 宮沢賢治の文学と宗教
６ 宮沢賢治における宗教と文学―ほんとうの考えとうその考えを分ける「実験の方法」
７ 宮沢賢治を語る
８ 宮沢賢治 詩と童話
９ いじめと宮沢賢治
１０ 賢治の世界―宮沢賢治生誕百年に因んで
１１ 宮沢さんのこと―第十九回宮沢賢治賞受賞者のあいさつ
著者等紹介
吉本隆明［ヨシモトタカアキ］
１９２４年東京生まれ。東京工業大学電気化学科卒業。詩人・評論家。戦後わが国の言論界を長きにわたりリードし、「戦後最大の思想家」「思想界の巨人」などと称される。２０１２年３月没（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
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i-miya
28
2012.10.14（＝本日日経新聞読書欄、書評＝詩人北川透） 2012.10.14 吉本隆明、2012死亡。 宮沢賢治に関する講演のすべてをおさめる。 吉本隆明が少年時代から、賢治に強い関心を抱いてきたことはよく知られている。 生涯、賢治と親鸞。 仏教に帰依した二人に、無信仰の立場の吉本が深く親炙したことは興味深い。 すでに二十数年前、『宮沢賢治』。 2012/10/14
壱萬弐仟縁
25
講演録。 賢治の四次元の世界。 別の眼で、客観的に光景を 鳥瞰できる（０３６頁）。 自分のことを客観的に見る。 確か、福田康夫元総理が いっていたフレーズであった。 相対化の視点は学ぶべきだろう。 上野の図書館で本を読んだ。 そして日蓮宗信者という（０４０頁）。 そうすると、ラスキンのような キリスト教との関係はどうなのか。 戒律の世界。 そして、死後の世界（０９６頁）。 語りの詩の流れを否定しようとする その否定性の言葉が括弧の中に いつも入ってくる（１０９頁）。 2014/05/30
❁Lei❁
22
著者の宮沢賢治についての講演をすべてまとめた本。話し言葉で書かれているので非常にわかりやすいです。いくつかの詩や童話を引用し、宗教・芸術・科学に対する賢治の思想や態度を考察しています。特に賢治が追い求めた善と悪の中性点、ほんとうとうその分け方についての話が面白かったです。一見不可解な物語でも、そこに賢治の思想や心理状態が織り込まれていると発見できました。良書です。2022/06/11
メタボン
22
☆☆☆ 講演集ということもあって、宮沢賢治の世界観（特に法華経との関連）がわかりやすく語られている。銀河鉄道の夜は私も思い入れの強い作品であり、改めてその重層的な世界が広がった気がする。（ ）の言葉（陰の声）の多用は、私も「違和感」を感じていたところなので、なるほどなと得心した。2013/03/24
そり
13
私は、一般とはかけ離れた世界像によくもわからず惹かれていた。▼「銀河鉄道の夜」の構造。物語は、現実から幻想、死、死後、それぞれ四つの世界を移行してまわる。世界の土台となる精神は、信仰者としての宮沢賢治が仏教から派生させたもの。世界を構築するパーツは、科学者としての宮沢賢治の鉱物や生物の知識。分厚い世界像だ。▼しかし、そこに止まらず、他作品において宮沢賢治は自らの想像の否定も生む。想像とそれに対する否定と、折り合いをつけるための苦心が、また世界像に深みを足す。↘2014/12/28
