出版社内容情報
なぜ小中学生女子は「わたし」ではなく「うち」と言うのか? ことばと社会とわたしたちの一筋縄ではいかない関係をひもとく。
内容説明
ことばには内容を表現するだけではなく、“その人らしさ”を表現し、話している人同士の関係を作り上げる働きがある。ことばの背後にある社会の規範や価値観を解きあかす社会言語学の知見から、「名前」「呼称」「敬語」「方言」「女ことば」といった観点を通して、ことばで「自分」を表現するとはどういうことかを考える。
目次
第1章 アイデンティティ表現の材料としての「ことば」
第2章 名前―「わたし」を示すことばの代表
第3章 呼称―呼び方で変わる関係
第4章 「ことば」とアイデンティティの結び付き
第5章 敬語―「正しい敬語」から「親しさを調整する敬語」へ
第6章 方言―「恥ずかしいことば」から「かっこいいことば」へ
第7章 「女ことば」―伝統的な“女らしさ”から辛口の材料へ
著者等紹介
中村桃子[ナカムラモモコ]
関東学院大学教授。専攻は言語学。1955年東京都生まれ。上智大学大学院修了。博士。著書に『「女ことば」はつくらる』(ひつじ書房、第27回山川菊栄賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とよぽん
52
言葉づかいとは、とても社会的なものなのだということが書いてある。特に、「女ことば」についての分析が印象に残った。女ことばなんてものは、男社会がでっち上げたシロモノだったのだ。以下205ページから引用「女ことば」とは、女性が使ってきた言葉づかいではなく、その時々の日本の歴史や政治の中で、人々が「女性」に望むすがたを、ことばの側面から女性に押し付けてきた「概念(イデオロギー)」なのだ。言葉づかいの変遷をジェンダーの視点から分析している。言葉で「自分」を表現する・・・奥が深くて引き込まれるちくまプリマー新書。2022/01/20
しゃが
51
良かった、胸にストーンと落ちた内容だった。ことば=〈その人らしさ〉、つまりアイデンティティだった。そして、名前・呼称・方言・女ことばも社会の規範や価値観・時代に大きく左右されていたし、今も左右されている。方言のステレオタイプにもいつも違和感があった。TVなどのアフレコなどで…、確かに「風と共に去りぬ」の黒人メイドの翻訳など粗野で無教養の色付けにに方言が使われる。「呼称」も鈴木孝夫さんの頃、言語比較は文化として見られていたが、今はもっと多様に変わってきた。以前の日本語の細やかさは社会規範だったのかも…。 2021/07/17
tamami
44
まずはざっと流し読み。(失礼!)著者は版元から「若い読者に向けての社会言語学の入門書」の執筆を勧められたと、あとがきに記す。正しい日本語とは何か、というような浩瀚な話題には簡単には答えられないが、自分としては今の日本語を、テレビやラジオ、ネット、SNS、それに日々の読書の中で楽しませてもらっている、というのが現況である。全体を読んでの印象では、著者の日本語への見方として、女ことばや敬語などは、近代と共に創出され、現代はそれが話者のアイデンティティ演出の道具としては役割が弱まりつつあるというような形で、日本2021/05/12
タルシル📖ヨムノスキー
28
昔テレビのUFO特集で、アメリカの田舎の農夫のUFOの目撃情報のインタビューに東北弁の日本語吹き替えが当てられていて、子供ながらになぜ東北弁なのか疑問に思っていました。この本はジェンダーやアイデンティティの問題を社会言語学という立場から考えた本。実際にはほとんど聞かないいわゆる女性言葉の謎とか、なぜ男は僕で女は私を使うのかなんて疑問に思ったことすらありませんでした。出身地以外の知名度の高い方言を使うことを「方言コスプレ」と言うことも初めて知ったし、敬語の距離感の話もなるほど。「…っす」も立派な敬語なのね。2023/09/16
to boy
25
言葉はただ何かを伝えるためにあるのではなく、アイデンティティーを表現するための材料であるとして、ことばとアイデンティティーの関係を論じた入門書。社会の変化が言葉に変化をもたらし、また言葉の変化が社会を変化させていくというダイナミックな考え方に感心した。己のことをなんと表現しようか、「ぼく」「わたし」「わたくし」「じぶん」など悩んだこともあった若かりし頃を懐かしみながら読みました。2021/09/23