出版社内容情報
忙しすぎる教員、授業への不満、役に立つ教育の要望。学校の様々な課題の背景を理解するために、あらためて学校はなぜあるのか、そして社会との関係を問いなおす。
内容説明
忙しすぎる教員、求められることが多い学校、役に立つ教育の要望。学校はいろいろな困難に直面している。その背景には、学校組織の特徴や社会との絡み合いがあるはずだ。学校は何のためにあるのかを問いなおす一冊。
目次
第1章 忙しすぎる教員と役割が多すぎる学校
第2章 学校はいかにして制度となったのか
第3章 学校組織は矛盾がつきもの
第4章 なぜ「学校教育は役に立つか」が議論になるのか
第5章 社会と学校は影響しあう
第6章 多様化・個性化時代の学校
終章 これからの学校を考える
著者等紹介
中澤渉[ナカザワワタル]
1973年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。博士(教育学)。東洋大学社会学部准教授、大阪大学大学院人間科学研究科教授などを経て、立教大学社会学部教授。専門は教育社会学。著書に『なぜ日本の公教育費は少ないのか』(勁草書房、サントリー学芸賞受賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みねね
34
これでちくプリは無理があるだろう! そう思えるほどの重厚さ。新書で300ページ近い分量と文字の小ささが、本書の深度を物語っている。大学文系教養レベルの授業で扱われそうな内容だった。/教育社会学をはじめとして、教育を取り巻く問題を包括的に捉え、学問的に記述する。ゆえに明確な答え『学校の役割って〇〇』が出るわけではないが、輪郭だけは朧げに浮かび上がってくる。academic。/教育機関としてのエビデンスとの相性の悪さ、行政機関としての説明責任、その両方を抱える矛盾から昨今の諸問題が発生しているように感じた。2024/03/20
りょうみや
25
日本の学校と先生の多忙の現状、学校という制度の歴史、社会と学校の関係、学校によって作られる格差や個人のアイデンティティなど。学校について多面的に考えていって全体像が明確になる。身近すぎる存在ゆえこれまで当たり前と思っていたことも色々と考えさせられる。高校生でも理解できるように書いたとあるが難しいように思えた。2021/10/21
venturingbeyond
24
考査採点の合間をぬって読了。中澤先生の著作は、『日本の公教育』に続いて2冊目ですが、立教に移っておられたのですね。中身は、近代の公教育の原理、官僚制化・合理化のメリット・デメリット、日本の学校教育の特異性(強みと弱み)、教育改革の前提と方向性などなど、教育社会学のオーソドックスな主張がコンパクトにまとめてある。与党文教族をはじめ、多様なステイクホルダーそれぞれの「俺の考える最強の教育!」に振り回されることの多いわが業界からすると、教育について語る際は、最低限本書の内容は踏まえておいてもらいたいところ。2021/10/10
U-Tchallenge
8
教育を冷静に現実的に捉えることのできる一冊となっている。教育は「一億総評論家」状態にあり、誰もが一言言えてしまうことで、閉塞感を生んでしまっている感がある。だから、データ等の客観的に見えるものを基に話し出さないと、なかなか話が進まないように感じている。それは教育現場でもそうだ。ちくまプリマー新書ということで、かなり平易な文章で書かれているので、誰しもが読み進めやすくなっている。もちろん、だからと言って内容が薄いというわけではない。教育について考えや話を進めたい者にとっては必読の一冊に間違いない。2021/11/26
ちょび
7
漠然と教育基本法や学習指導要綱なるものを変えて行けば、今よりも少しはましになるのでは?と考えていたけれど、そんな簡単なものではないことがよく分かった。学校の教師がとにかく忙しすぎるのも、子供たちの窮屈さも何とかして欲しい。最終章「これからの学校を考える」で著者が考える問題点や改善策やヒントが記されている。社会の分断や格差社会を学校教育で解決することには限界があるが、何ができるか現実目線で考える必要があると言う。学校は将来の日本を担う人材の育成する場で、結果はいずれ私たちの社会に返ってくると結ぶ。2022/02/11