内容説明
この世に生まれ落ち、やがて死にゆく“わたし”たち、“ひと”として生き、交わり、すれ違うその諸相―。困難な時代のただ中で紡がれた、共鳴しあい連鎖する哲学的思考。
目次
1 顔―存在の先触れ
2 こころ―しるしの交換
3 親しみ―家族という磁場
4 恋―「この人」、あるいは情調の曲折
5 私的なもの―所有の逆説
6 “個”―自由の隘路
7 シヴィル―市民が「市民」になるとき
8 ワン・オブ・ゼム―「多様性」という名のアパルトヘイト
9 ヒューマン―「人間的」であるということ
10 死―自然と非自然、あるいは死の人称
著者等紹介
鷲田清一[ワシダキヨカズ]
1949年京都市生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。大阪大学教授、大阪大学総長などを歴任。現在、大谷大学教授。哲学・倫理学を専攻。89年『分散する理性』(のち『現象学の視線』に改題(講談社学術文庫))と『モードの迷宮』(ちくま学芸文庫)でサントリー学芸賞、2000年『「聴く」ことの力』(阪急コミュニケーションズ)で桑原武夫学芸賞、12年『「ぐずくず」の理由』(角川選書)で読売文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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踊る猫
25
この著者の書くものは平たい「啓蒙書」だとナメていて読まず嫌いで居たのだけれど、我が不明を恥じなければならないようだ。確かに目新しい発見を与えてくれるというわけではないが、既知の理論(それは現象学に留まらず、バルトやアーレントといった畑違いの議論までフォローされている)を自在に組み替えることによってユニークな「遊び」を提示しているように思う。哲学の勉強をしたい方はまずここから初めてはどうか、と思われる。読み終えて、「私」とはなにか、「自分」とはなにかといったアポリアに取り組む勇気をもらったような気分になった2020/06/13
蒼海
24
まだ深くは読んでないけどものすごく面白い。医学の話が特に。理路整然とした言葉だけに染みる。良書。受験終わってからもいっかい読もうっと。2014/11/24
とろこ
10
理解できたのは3分の1くらいかも。しかし充実の思考体験だった。「わたしたちは…」と言いかけて、「しかし、この場合の『わたし』とは誰を指すのか」といちいち立ち止まり、振り返り、考え直すような、これぞ哲学の快感ともいえるまどろっこしくややこしい話。まえがきで書かれている通り、結論は求めず不調和の軋みの音自体が〈ひと〉だというスタンスに、ある意味安心をおぼえる。一文を3回も4回も読み直すような読書は久しぶりだったのでエネルギーも大いに使ったが、何気なく使う言葉や概念も、必ず再考の余地があることを銘じておきたい。2013/03/30
Olive
9
7割くらいわからなかった。理解した3割は、ためになった。 多様性に立ちはだかる相対主義の問題の部分は、特に面白かった。「異なる文化に属する人びとは異なる世界にすむ」、真理の複数性を絶対的真理とすれば自己耽溺に陥る。それでは異文化間の相互理解は不可能というより他はなくなり、懐疑主義や認識論的アナーキーに帰結するしかない。ハッとしたのは世界解釈に「不変項」の存在を認めるということ、というところだった。次読むときは半分くらいは理解したい。2022/09/03
nrk_baby
4
あとがきにもあったけど、鷲田さん自身自分の思考の癖については把握してるのね2014/12/01