内容説明
若者たちはなぜ自傷行為をするのか―自傷行為とは、「身体の痛み」で「心の痛み」にフタをすること。彼らが切っているのは皮膚だけではない。生き延びるために、つらい感情を意識から切り離しているのだ…。自傷行為の正しい理解と対応について具体的な提案をする実践書。
目次
第1部 自傷行為をどう理解するか(自傷行為の現在;自傷行為の定義;ボディモディフィケーションと自傷行為;自傷行為が発現するメカニズム ほか)
第2部 自傷行為にどうかかわるか(援助にあたって理解しておくべきこと;自傷行為のアセスメント;自傷行為のマネジメント;若者の自殺予防と社会安全のために)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コージー
36
★★★★★「自傷行為・自殺」の研究などを行っている、精神科医の松本俊彦先生の著書。この本は、「自傷行為を正しく理解する」ための援助者に向けた内容です。先生が行われた研究結果や、統計データ、参考文献などが、たくさん盛りこまれており、とても肉厚な内容となっています。援助者の方も、また当事者の方にもぜひオススメしたい本です。【印象的な言葉】最も自分を大切にしない行動は、自傷行為や物質乱用をすること以前に、「つらいときに『つらい』と誰かに伝えないこと、誰にも助けを求めないこと」。2019/04/24
まさや
11
自傷行為は自分の意識を変容させることで、一時的にその状況を生き延びる行為。 慣れてきて、心の痛みが消えなくなってくると行為がエスカレートしていくそうです。2021/12/05
lethe
10
自分自身の体験に重ね合わせてもそうだなと思うことが殆ど書いてある。偏見でも気休めでもない、研究や実体験に基づいた援助者から援助者へのメッセージは、また自分自身をある程度コントロール出来るようになってきた経験者にとっても役に立つのではと思う。後のことはどうでもいい、今この瞬間楽になりたいんだと思う時ぞっとする。その延長線上に、取り返しのつかない結果が待っているのだと思うと。でも、その危険信号に気付けるままでいられるなら大丈夫。そしてもし現役の子と関わる事があったなら。その時はまたもう一度本書を手に取りたい。2018/11/16
hutosi
9
自傷で人は死なないが自傷で死に近づく。自傷するという事が既に苛酷な環境にいるんだという事、そして構って欲しいという理由だけで自傷するのであればそれ自体が既に苛酷な環境にいるんじゃないかと感じる事が大切だと思った。また自傷者は「援助希求性」が低いために周り(医者含む)が気付かぬうちにゆっくりと深刻化していくそうだ。解離性症状の事については「解離性健忘」、「感情鈍麻」、「離人症」らへんと自傷の仕組みを説明されていて概ね想像できました。自分自身は自傷した事はないのですが、軽い解離性症状はある気がしました。2013/12/27
Enola/Alone
9
「リストカットは生きるための行為」に、目から鱗。自傷行為に対する考え方が180度変わりました。この分野に関わろうとしている人はもちろん、こういった問題を抱えやすい10代、20代のお子さんを持つ方にもぜひ一読をお勧めしたい。親しみのある丁寧な語り口で、筆者の強い思いが伝わってきます。専門書ながらここまでわかりやすく、引き込まれる本には初めて出会いました。2012/11/28