出版社内容情報
在日を代表する二人の作家が、四・三事件の闘いの現在と文学の軌跡を再び語りあい、記憶と歴史を回復する文学の可能性を追求する。
内容説明
一九四八年四月三日、済州島で、朝鮮の南北分断に反対する武装蜂起は、三万人以上が犠牲となるジェノサイドとなった。この済州島四・三事件を半世紀にわたって書きつづけてきた小説家・金石範と蜂起に参加しながら沈黙してきた詩人・金時鐘との政治・歴史・文学をめぐる激烈なる対話。14年ぶりの対談を増補!!
目次
第1部 「解放」から四・三前夜まで(「解放」をどのように迎えたのか;「解放」直後―民族独立への動き;信託統治問題と米ソの対立 ほか)
第2部 四・三事件とその意味(四・三蜂起当日と直後;五月一〇日の単独選挙ボイコット;郵便局事件 ほか)
第3部 悲しむ自由の喜び(二〇〇〇年代の四・三;「鬼門」だった韓国;金時鐘、半世紀ぶりの済州島 ほか)
著者等紹介
金石範[キムソクポム]
1925年、大阪生まれ。小説家。「鴉の死」(1957)以来、済州島四・三事件を書き続け、1万1000枚の大長編『火山島』(1976‐97)を完成させる
金時鐘[キムシジョン]
1929年、朝鮮生まれ。詩人。済州四・三の蜂起に南労党員として関わり、日本に脱出
文京洙[ムンギョンス]
1950年、東京生まれ。立命館大学国際関係学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
onisjim
2
なんとも重苦しい記憶、歴史をめぐる対話だが読む価値がある。そしてディアスポラと言語・文学という問題系の切実さを知る、ひとつの端緒となりうるだろう。2015/05/11
kentaro mori
1
⚫︎四・三事件というのは、アメリカのいう正義とか自由とかの本質を明かす歴史的事件でもあるんですよね。第二次世界大戦以後のね、米ソの二大超大国が角突き合わせる中で、アメリカ軍と民衆の側がね、限られた地域で衝突したのは済州島しかないんですよね。それも一月や二月のことじゃなくて、実質二年近くもかけてね。これはもうそのまま、アメリカの戦後政策というのかな、うちの国をめぐっての戦後処理、これ日本も含まれますが、「反共」という「大義」のためには手段を選ばないアメリカの、残忍な体質を最も露呈した事件だと思いますね。それ2024/02/06
りゃーん
1
二次大戦後の東アジア情勢の膿が全て破裂した様を見せた済州島事件を事件の当事者である詩人と現場から離れていた小説家による対談。苛烈な虐殺の記録を語るものだが、連合赤軍事件やアイヒマン実験を想起させる普遍性がある。同時に祖国や民族の恥部や呪われた記憶を語ることに妙なカタルシスがある。恥部を語ることは恥ずかしいことではない。反省という自虐でない、特撮でゴジラが我が住む街を業火で焼くようなシーンを見せつけられるような臨死体験の如き錯覚がある。最後2人は巫女による儀式を語るがやはり全てを疑うと最後に神が現れるのだ。2017/12/13
ゆに
0
生き生きした言葉で、金時鐘と金石範の半生と済州島の関係が語られている。自分の興味関心に引き付けて言うと、虐殺の痕跡を隠すための水葬と、水葬された人々の魂を呼び戻すために浜辺で行われるシャーマンの儀式についての話が印象深かった。2017/03/13
ishii.mg
0
済州島の四・三事件をめぐる二人のさまざまな思いが交錯する。時鐘の人生そのものが厳しすぎて詩人としは沈黙せざるを得なかった。石範は逆に巨大な小説を書き続けた。石範の「火山島」は例え入手しても一生かかって読めるかどうか。それでもこの二人、それと梁石日、柳美里を加えて「在日朝鮮人語」としての日本文学をちびちびとたどってみよう。2019/11/08