内容説明
『マハーバーラタ』と共にインド古典文学を代表する一大叙事詩の初めての完訳。第1巻「少年の巻」は、魔王を退治するためにヴィシュヌ神が人間に化身して誕生したラーマ王子がシーターと結婚するまでを語る。
目次
第1巻 少年の巻(理想の人物ラーマの行状のあらまし;行状記を詩作する韻律の着想と梵天の詩作のすすめ;原初の詩人の創作した行状記の全構図;クシャとラヴァの「ラーマーヤナ」の吟唱;アヨーディヤー都城;ダシャラタ王とその王国;ダシャラタ王に仕える大臣たち;世継ぎの王子の誕生を願う馬祠祭執行の決意;リシュヤシュリンガ仙の物語;リシュヤシュリンガ仙を招請した方法 ほか)
著者等紹介
中村了昭[ナカムラリョウショウ]
1927年生まれ。東北大学大学院文学研究科博士課程印度哲学専攻修了。文学博士。鹿児島国際大学名誉教授。専攻は、インド古代・中古の文化(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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NAO
68
ラーマ王子による羅刹ラーヴァナ退治を描いた、『マハーバーラタ』と並ぶインドの二大叙事詩の一つ。『マハーバーラタ』の中にこの話の要約が出てくるため、成立はこちらの方が古いようだ。苦行の成果として自分の不死を確かなものとするための願いを口にするとき、人間を蔑視していたために「神、怪物、野獣に殺されることはない」と人間を条件に入れなかったラーヴァナ。ちょっとした蔑視、慢心がとんでもない命取りとなるというのは、神話においてはよくあること。以前読んだ『マハーバーラタ』より、ずっと読みやすいし、面白そうだ。2018/02/01
syaori
62
「ラーマーヤナ」とはラーマの生涯といった意味で、コーサラ国の王子ラーマの事績が歌われます。本巻と最終巻は後代の追加だそうで、そのためか、その少年時代を語るこの巻は、彼がヴィシュヌ神の示現した存在であることや高貴な家系の由緒など彼をロマンチックに彩る挿話や創世神話が挿入されて一冊これ序章といった趣なのですが、三万年王位にあった彼の祖先の王とその六万の王子たちなど時間的にも空間的にも広さと奥深さを感じさせる挿話群に、壮大な物語の幕開けを感じてわくわくせずにはいられません。ラーマが王女シーターと結婚して次巻へ。2022/11/15
roughfractus02
9
声で伝達される神話物語は一部族の戦いに関する散在した記憶を集めて文字に記し、壮大な叙事詩となる(『マハーバーラタ』『イーリアス』『旧約聖書』)。都市や国家にその物語が定着すると、共同体の内外の敵と戦う1人の英雄物語が生まれる(本書、『オデュッセイア』『新約聖書』)。そんなパターンを思い起こしてしまうヒンドゥーの英雄物語の始まりが本巻である。子供を欲する王が祭祀を行い4人の子供を得るのは、外敵ラーシャクサ(羅刹)勢力が拡大して王国の存亡の危機にあるからだ。その中で、ラーマ王子は危機に立ち向かう者として育つ。2022/09/21
スズコ(梵我一如、一なる生命)
4
面白い。前の訳者の方が訳し終える前に亡くなってしまったとのことで未完なのが大変残念と思っていたので新訳が出たのを知った時は大変嬉しかったです。ただ、前の訳者版と随分印象が違っていて、ちょっと困惑していたりもします。。。前の訳者版を読んだのも十年も前なので、これを機会にもう一度読み直してみようかと思いました。まだまだ新訳も先が随分ありますが…2013/12/12
→0!P!
1
固有名詞がいちいち長いのとやたら多いので、読み進めるのが序盤は大変。 ラーマ王子が、バラモンに連れられて、羅刹を殺害しに行くまでを扱っているが、内容の大半は、バラモンが若い王子に説く、世界誕生秘話、偉大な王の系譜、崇高なバラモンの修行にまつわる説話である。修行がいとも容易く破綻したり、暴力を列聖や神々に向けたりしても、のちに後腐れなく許されることや、人間が修行を積むことで神々がその功徳を恐れて邪魔しにくるなど、人間の力が神々と拮抗し得る点が独特である。2022/02/08