出版社内容情報
解離性障害や境界例などの病態にどう対応すればよいか。「ハイマート」概念を軸に、薬物療法では蔽いきれない人間のあり方を考察する
内容説明
境界例では生命性を暴発させ、摂食障害では生命性の支配を望み、解離性障害では生命性を切り離す…“傷つき体験”の諸相から精神医学的アプローチを考える。
目次
第1部 解離の諸相(存在の解離―生命性をめぐる病理;瞬間の自己性―トラウマ学再論;否定の身体―現代精神医学におけるメルロ=ポンティ;飛翔と浮遊のはざまで―現代という解離空間を生きる;流れない時間、触れえない自分)
第2部 生命の所在(交感する身体―拒食と境界例の自己と他者;愛のキアスム―食の病と依存;二重の生命―摂食障害者が往々にして境界例的であるのはなぜだろうか;空虚という存在―自傷の可視性をめぐって;置き換えられる身体/置き換えられる聖;語りえなさを語るということ―統合失調症を生きる;精神病理学は、絶滅寸前か)
著者等紹介
野間俊一[ノマシュンイチ]
1965年に生まれる。精神科医。医学博士。1990年京都大学医学部卒業。ドイツ、ヴュルツブルク大学精神療法・医学的心理学研究所を経て、現在、京都大学大学院医学研究科脳病態生理学講座精神医学、講師。専攻は、思春期青年期精神医学、心身医学、精神病理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まいこ
2
食を病む人と他の依存性との違いについて興味深く読んだ。見られる自己を作ることは社会の中で生きるもの全てに必要ではあっても、摂食障害者にはそれが何にもまして優先され、生命としての自己を飲み込んでしまう。そしてありのままの自己とどんどん乖離が進み、孤立し、ますます食を病む。この病気の中核に「過活動」があり、病む前から勉学や勤労等、結果が数値や順位として表されることにのめり込んでいた人が多いという話にはすごく納得する。2014/02/01
さ◯てんだぁ ver.NEET
0
前回読んだ著作と重複しているところが多く、すんなり読めた。もちろん、こちらの方がより深く論じてますよ。個人的にはメルロ=ポンティへの興味がより強く湧いた一冊2013/08/15
tuna
0
1990年に精神科医になった筆者の論考は現代的であるが、木村敏らの系譜にもあり、従来の精神病理学的視座が継承されている。DSMが台頭した時代において、精神病理学は如何にあるべきか。キータームとなる「ハイマートHeimat」は、「起源について理解しよう」というよりも、現象を捉え、その関わりを考えるというところに強調点があり、そこに共感を受けながら読み進めていった。一つ一つが慎重かつ情熱を感じる論考で面白く、また読みやすさがある。自身の体験に繋がる感覚もあって、現代的な心性の理解が深まる感じがした。2013/03/23