内容説明
寺院や神社の境内には、清澄で落ち着いた空気が流れている。仏堂や社殿など、多くの建築が歳月をへてしぶい色をみせていることも、あの特有の雰囲気をつくりだしているだろう。しかし、かつて寺社の境内は、もっとにぎやかで楽しい場所だったかもしれないのである。法会や祭礼の日はもちろん、そうでないときにも僧侶や神官たちはしばしば田楽・延年・猿楽などの芸能を楽しんだ。多くの芸能者たちが寺社に出入りし、僧や神官、美しく装った稚児たちが芸能を鑑賞し、みずから演じてもいた。中世の寺社は、劇場でもあった。
目次
寺社・もうひとつの中世社会
1 田楽・邪気払いの呪法(永長の大田楽;武家と田楽 ほか)
2 延年・僧と稚児の競演(遐齢延年;開会式と音楽会 ほか)
3 猿楽・四座と寺社の葛藤(田楽から猿楽へ;室町時代の薪猿楽 ほか)
中世への回路
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ばん
2
具体的を示しながら祭祀芸能と寺社、政治の経営的側面の関係を簡潔に述べていて、流れがつかめた。延年風流についても書かれていて参考になった。2012/04/19
rbyawa
1
g121、「院」の説明として貴族の子弟の受け皿として機能し一つの家が院を主に継承していたというのを読んだことがあるが、あるいは猿楽の贔屓の違いというのもその状況を示していたのか、猿楽そのものも確かここに語られていたよりそれほど前に成立していたわけでもないはずなのでそこはなんとも言えない。ただ、京都の室町政権に猿楽が接近していくという状況に関してはこの本の内容でしかと納得、確かに経済的に支えられる状況にない。六万衆というのも一つ前の時代には大衆と呼ばれていたように思うのだけれども、寺の内部事情かなこの辺は。2016/12/07
kaeremakure
1
猿楽座の贔屓をめぐって興福寺で対立が起こり「六方衆の従者や古市氏の足軽が跳梁して寺内の治安は悪化した。追いはぎが横行し殺人さえ起こった」という中世的な無茶ぶりが凄い。大乗院門跡の尋尊が、天満社の神事に何年も参勤してこない宇治猿楽を配下の唱門師に命じて襲わせたとか、興福寺衆徒の棟梁である古市氏が奈良市内の警察権を持っていたとか、かいま見える複雑怪奇な利権や支配関係が芸能についての記述より面白かったりする。2014/06/08
すー
1
興福寺における芸能 風流は延年の一部 稚児ばかり登場するのは何故か2012/01/08
こんがら童子
1
入門的な内容で、特に得られる情報はなかった。2009/07/02