内容説明
平城京にはどんな人がどこに住んでいたのか。長屋王邸などの発掘成果を駆使し、宅地の規模や構造から相続問題まで住宅事情に迫る。身分が高いほど一等地を与えられたとされる通説を見直し、当時の社会構造にまで言及。
目次
平城京の住人―プロローグ
平城京に家をもつ人々(長屋王邸跡の発掘調査が語るもの;平城京に住んだ人々;舎人親王の邸宅)
平城京の宅地は相続されたのか(奈良時代の遺産相続;遺産相続問題;藤原氏の邸宅)
発掘された平城京の宅地(宅地の規模;宅地の構造;平城京の造営と河川整備)
平城京の宅地と居住者を考える(平城京の宅地を理解するための仮説;宮殿建設用地と宮周辺の宅地;大伴氏の邸宅;平城京の宅地の実際)
平城京の宅地が語るもの―エピローグ
著者等紹介
近江俊秀[オオミトシヒデ]
1966年、宮城県に生まれる。1988年、奈良大学文学部文化財学科卒業。奈良県立橿原考古学研究所主任研究員を経て現在、文化庁文化財部記念物課埋蔵文化財部門に勤務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
レアル
44
平城京の横にあるショッピングセンター建設の際に見つかった長屋王邸宅跡をベースに置いた本ではあるが、当時の情勢や政治等を鑑み平城京での貴族の住宅事情を考古学的に述べている。「高貴な人が必ず宮に近くに住んでいる」という原則を覆すその著者の説が読み処かな。歴史の中でも不動産を特化した歴史的視点が面白い2022/09/01
だまし売りNo
29
公知公民が律令制の建前であったが、平城京の宅地は相続されていた。 2023/06/30
アメヲトコ
5
「平城京では高位の貴族ほど宮に近く広い宅地を班給される」という通説に対し、その原則におさまらない宅地政策のありようを考古学の立場から考察したもの。当時の土地に対する観念とか、相続のありようとか、古代の氏族制とその解体とか、宅地を通して浮かび上がる世界がとても面白いです。2015/06/04
wang
2
碁盤の目のような整然とした条坊制の都市計画で建設された都市、平城京。だが、その都市で誰がどこに住みどういう住宅を建てたのかなど具体的なことはあまり知られていない。文献資料や発掘調査などでわかってきたことをつなぎ合わせた現在知ることのできる姿がここにある。主に長屋王邸跡を中心とするが、最初にどのように配給されたのか。先住民への補償は?死後の相続はどうか。売買できたのか?など具体的な事例を交えて書かれていて理解しやすい。不明点も多いが、氏族制から官僚による律令国家への端境期の一端がわかる。2017/06/12