内容説明
記憶とは、たいへん身近なもので、私たちは、ふだん、あまり深く考えるようなことはしない。しかし「なぜ、そうなるの」と問われると、わからないことばかり。おぼえたと思っていたのに忘れてしまったり、忘れたのにふと思い出したり、不思議なことばかりである。本書に登場する新進気鋭の記憶研究者は、その“記憶のなぞ”に、果敢に挑戦している人たち。そのなぞ解きのおもしろさを、本書は教えてくれる。
目次
序章 記憶研究のパースペクティブ
1 自伝的記憶―思い出は、かくのごとく
2 記憶と対人認知―文脈効果とステレオタイプ的判断をめぐって
3 記憶と感情―いま、改めて感情とは何かを問い直すために
4 展望的記憶―意図の想起のメカニズム
5 記憶と意識―どんな経験も影響はずっと残る
6 記憶と知識―認知の過程を支えるベースとしての知識
7 場所の記憶―人間はどのように空間を認知するのか
8 行為の記憶―驚異の実演パワー
9 作動記憶―情報の処理と保持を支えるダイナミックなシステム
10 メタ記憶―覚えること、思い出すこと、忘れることに立ち向かう心
著者等紹介
森敏昭[モリトシアキ]
福岡県出身。広島大学大学院教育学研究科博士課程後期中途退学。現在、広島大学大学院教育学研究科教授、文学博士。専門は認知心理学・教育心理学
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感想・レビュー
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aiken
7
2001年の本。図書館本。認知心理学の世界を当時の学部生くらいを対象に幅広く解説。こんなに面白いから最近の学生は心理学や脳科学、生物学に進むのですねえ。理系オジサンには数学や物理、製造業という発想しかなかったなあ。加えて最近流行りの「学び直し」にも目覚めてしまいそう。展望的記憶の章の「事象ベースの想起」は年齢に関係ない「時間ベースの想起」は年寄りは苦手という話はまさにその通り。記憶と知識の章の語彙的表象やプライミング、アンカリングなどはテキストマイニングに繋がっているようにも見え、たいへん参考になった。2022/06/18