内容説明
生米を水に浸すよう指示した徳川家康、醤油が欲しいと言って叱られた井伊直政、逃避行中に雑草を食べた真田信之…。歴史小説家である著者が、さまざまな文献を渉猟し、戦国の食にまつわる面白エピソードを紹介。さらに文献に登場する料理を再現して実食する。果たしてその味は…。美味いのか?まずいのか?食を通して、当時の暮らしぶりを知り、戦国の世と先人たちに思いを馳せる。
目次
第1章 赤米―稲米として最悪のもの?
第2章 糠味噌汁―醤油は贅沢?叱られた井伊直政
第3章 芋がら縄―戦国時代のインスタントスープ
第4章 干し飯―最重要の保存食を腐らせた武将とは?
第5章 スギナ―はなはだ食べづらきもの、真田信之の述懐
第6章 粕取焼酎―ツボいっぱいに詰めてくれ!真田信繁の好物
第7章 牛肉―宣教師の陰謀か?みんな虜の牛肉料理
第8章 ほうとう―戦国時代の麺食の実態とは?
第9章 味噌―行軍中にできる謎の味噌の正体を追う
著者等紹介
黒澤はゆま[クロサワハユマ]
歴史小説家。1979年、宮崎県生まれ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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修一朗
107
戦国時代の食事情に興味津々だ。冷や飯湯漬けを食って出陣とか陣中で糒を戻してかじる,なんてこと自分じゃやらないので実践してくれてありがとう。干し飯は結構作るのが難しいんだって。赤米の話が興味深い。戦国時代は新田開発の最中でまずは畑で作れる赤米を先に作ったのだそう。でっかい握り飯をほおばる…なんてことは江戸時代以降のことで男は黙ってぼそぼそ赤米食い,が正しい姿なのだ。今は糠床にしか使われない糠味噌汁が普通で,芋がら縄が意外と好評で食えて,当時は焼酎と言えば粕取だったとか,ためになって面白かったです。 2020/09/03
みこ
35
残された資料などを基に戦国時代の人々が食べていたであろう食事を再現。本当に不味そうなのは最初の赤米くらいで、あとはむしろ美味しそう。武田信玄・真田信之・井伊直政など勢力を拡大させて名を遺した武将はなにも腕っぷしが強かっただけではなく、兵士一人一人の食事に気を使うことができる兵站の概念を理解した人たちだった。ところで、飯が美味いと感じる(味覚障害が起こっていない)ことで今日も一日生き延びられると実感できる今日この頃。2020/05/10
パトラッシュ
34
人は誰も旨いものを食べたいが、まともな食料の乏しい戦国時代に前線の将兵は何を食って生き延びたのか。小説や研究書もまず取り上げないテーマに挑み、しかもそれの再現に苦労する姿が愉快だ。畑で育つ赤米、糠味噌汁に干し飯、雑草に芋がら縄などを食べるなど想像もできないし、当時は貴族や僧侶までも肉食していたなど初めて知った。まずい飯でも精一杯工夫して腹に入れ、合戦に勝ち抜いた者が勝利を得たのだと思うと戦国期を見る常識や視点が激変する。こんな時代に現代のフレンチシェフがタイムスリップしたら、そりゃ信長に重用されるだろう。2020/07/22
テツ
30
戦国時代に実際に食べられていた食事を調べあげ作り実食するという現代社会を生きる上で何の役にも立たない(誉めている)ことに力を込めた一冊。今の洗練された食生活からしたら微妙だと感じることは間違いないのだけれど、歴史にまつわるてんこもりのロマンがスパイスになっているせいで一度くらいは食べてみたいなと思ってしまうのが恐ろしい。通常の食事だってわりと厳しそうなのに兵糧職なんてとんでもないんだろうなあ……。基本的に何を食べてもそこそこ美味しいこの時代に生まれたことを感謝します。2020/03/25
フク
24
図書館。著者が幼い頃大河ドラマで見た「あれ食べてみたい」を実践。酒、獣肉、味噌あたりは普通に美味しそう。「自分の手で育てた生き物には、慈悲の気持ちが湧くから、殺したり食べたりしてはいけない」という日本における獣肉食に対する考察はスッキリした。2020/03/21