内容説明
それが存在しない世界に―科学的な実証知が勃興し、旧来の人文教養が失墜した世紀末の憂鬱の只中で、それでも「文学に賭ける」決断を下したプルースト。作家が格闘した、『失われた時を求めて』誕生以前の文の地形を明らかにすることを通し、その出現の意味を探る労作。
目次
世紀末の憂鬱―二つの“文学的病”
第1部 文学の位置―時代といかに闘うか(文学教養―“読むこと”と“書くこと”の不純な関係;“教養小説”を読む方法;マルセル・プルーストの修業時代)
第2部 小説の可能性(時代と闘う二つの美学―前衛的であったということ;“鏡映”の美学を超えて―レアリスムとの闘い;反=日記あるいは「文学生活」批判;歴史は物語ではない―小説的真実のゆくえ)
第3部 近代批評と小説―『サント=ブーヴに逆らって』の射程(サント=ブーヴの喪が明けて;テーヌの未完の小説―“教養小説”が不可能になるところ;サント=ブーヴをパロディ化する;近代「生成批評」のその後)
第4部 プルースト小説の地平(『ジャン・サントゥイユ』から『失われた時を求めて』へ―“書けない主人公”の誕生;「天職の物語」の終わりかた;『見出された時』を読む―作家はいつ書き終えるか)
著者等紹介
中野知律[ナカノチズ]
1959年愛媛県松山市に生まれる。1981年東京大学教養学部教養学科卒業。1984年東京大学大学院人文科学研究科仏語仏文学修士課程修了。1989年パリ第4大学にて博士号取得。1991年東京大学大学院人文科学研究科仏語仏文学博士課程満期退学。一橋大学社会学部専任講師、助教授を経て、一橋大学大学院社会学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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