内容説明
本書は、主体と環境のさまざまな関係を生命(DNA)レベルから同型的に捉えるエピゲノム・モデルのもと、免疫系の抗原(アレルゲン)および免疫記憶とトラウマ系のトラウマ記憶物質(痕跡)の共通点を見出しながら、感作としてのトラウマ記憶物質を脱感作する方法を、分子脳科学の再固定化消去法に通底するEMDRと系統的脱感作および持続的エクスポージャー(PE)、いわゆる脱感作系セラピーに見出した。とりわけ、EMDRなどの消去学習は、PTSDの原因をトラウマ記憶物質まで遡及するとともに、分子脳科学が動物実験を通して解明した、記憶のメカニズム(新しい情報が入ると古い記憶が想起され、再固定化されるまでのあいだ、不安定化するという機序)を活用してそのトラウマ記憶物質を消去する脱感作系セラピーを有力な精神療法として支持している。
目次
序論―エピゲノム・モデルとその拡張
1 免疫系と心の免疫モデル
2 PTSDと花粉症
3 記憶の分子脳科学―記憶物質の科学的実在論
4 神経新生の促進に基づくPTSDの予防法
5 PTSDの治療法と脱感作系セラピー
6 PTSDの自然主義的制御に向けて
著者等紹介
中井孝章[ナカイタカアキ]
1958年大阪府生まれ。大阪市立大学大学院生活科学研究科教授。学術博士。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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