感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きいち
20
所得格差の拡大が平均寿命を低下させる、というだけでは社会を変える説得力は十分ではない、この本が明らかにするような、格差が低所得者の健康をむしばむだけではなく、富裕層のストレスをも増大させ健康をむしばんでいくという事実。これなら、「べき論」ではなく、功利的に合意形成に向かえるではないか。◇それにしても、被差別や虐待がさらなる連鎖を生むという身も蓋もないデータの数々。拡大を続けていた20世紀前半の格差を結果的に一気に解消したのは各国の戦争突入だが、それは大きく引いて見るととても合理的な選択だったのかもしれぬ。2014/10/30
nanchara_dawn
5
かなりの良書。面白いデータが次々と出てくる。国の豊かさと平均寿命の長さには関連性が見出だせないが、所得格差が大きい都市ほど死亡率が高くなっていく。所得格差が大きい社会では、貧しい側だけではなく富裕層の死亡率も上がる(!)、等。重要なのは相対性なのだ。「なぜ所得格差が大きいのはいけないことなのか」という問いに対して、道徳や良心に依らないクールな回答を提示していると思う。また、霊長類の研究なども援用した、心理社会的(psychosocial)な分析も面白い――少なくとも、読み物として面白い。2013/02/12
aya
3
所得格差が大きい不平等な社会では、貧しい者のみならず高所得者も健康を害し、男性の死亡率も高い、ということが実証済みということに驚いた。 経済発展だけしても多くの人は幸せになれない。じゃあ富の分配をどうするか。民主主義を経済や職場に持ち込み、賃金格差を自分たちで管理、仕事内容をコントロールする、民主主義の拡大で、人はより健康になり、企業の業績も上がる。疫学転換を超えた社会で、人の豊かさにとって大事なのは、自由・平等・博愛である。 幸せに暮らすためには、どういう社会を目指すのが良いのか考えさせられた。2011/02/06
まづだ
1
「幸福度を決めるのは、貧困(所得)ではなく格差(所得格差)である」今ではすっかり定着した理論を最初に広めた本。面白かったのは、これを書いた格差社会アメリカの空気と、格差の少ない日本の空気の違い。著者は格差が少なければ幸福になることを前提に書いているけれど、その幸福を達成しているはずのぼくら日本人は、必ずしも幸福ではない。それは、更なる幸福を求める人の業というより、幸福の尺度の違いに感じられました。2012/09/14
satochan
1
不健康な格差社会を健康にする方法については9章に出てくるが、訳者あとがきから読むといいかもしれない。データを多少著者の好きな解釈にして使っているところもあるような気がするけれど、格差社会が暴力の連鎖を生むようなことを書いてある本。社会学というより心理学っぽい気もする。格差社会がもたらす人々の心理的側面などからアプローチしている点はおもしろいと思う。2011/03/07