出版社内容情報
植民地の言語環境が生んだクレオール文学として,宮沢賢治の文学を読む.賢治の「東北」,それこそが雑種的文学の創造性を作品に刻印した複合文化のトポスであった.ポスト植民地主義の世界史的な課題に連なる東北文学論.
目次
1 東北文学論―植民地文学からクレオール文学へ(カフカ 雑種的思考/複数の胸さわぎ;コンラッド さまよえるポーランド文学)
2 植民地の擬人法(音楽と食文化)
3 植民地主義のはじまり
4 プロスペリズムの終わり(ガラクタとしてガラクタに接する―私の方法叙説)
5 新山人文学論
6 ベーリング鉄道から銀河鉄道へ
7 冷戦と文学
8 クレオールな文学
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
❁Lei❁
17
宮沢賢治の作品を植民地文学として読み解く一冊。ポストコロニアル理論の観点から、人間(植民者)と動物や自然(非植民者)の関係を描いた戦争文学として、「鹿踊りのはじまり」「狼森と笊森、盗森」などを考察しています。またクレオール言語の観点で、「なめとこ山の熊」の小十郎が熊語を東北方言に翻訳することなく自然に理解していたとの主張が面白かったです。異文化接触や多文化主義、地球のグローバリゼーションが注目される中で有意義な一冊だと思います。2022/07/12
ヨー
4
すっごい参考になる2023/01/16
●●
1
賢治の生きた時代は、植民地の時代であり、戦争の時代であった、そして自分は読んでいるうちに、そのことが頭から抜け落ちると、そしてそれを意識すると深い読みに繋がる、と感じた。2022/07/05
ぶるり
1
植民地→クレオールの流れに宮沢賢治がいるというのは初耳でした。考えたこともない話なので戸惑っています。どっちかっていうと上下の関わり合いという言い方の方が個人的にはしっくりくるというか。 ともあれ、いろんな読み方ができる本なんだなと思いました。おもしろかったです。(棒読み)2014/02/23