出版社内容情報
ごく普通の少女として育ち,結婚して子供を育て-とりたてて波瀾のない穏やかな生涯の中で,ギャスケル(1810-65)は,聡明な現実感覚と落ち着いた語り口で人生を活写した魅力的な作品を書いた.8篇中4篇は本邦初訳.
内容説明
ごく普通の少女として育ち、結婚して子供を育て―とりたてて波瀾のない穏やかな生涯の中で、ギャスケルは、聡明な現実感覚と落ち着いた語り口で人生を活写した魅力的な作品を書いた。本邦初訳四篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Bashlier
34
4/5 「暖かい光」オースティンを「星」、エリオットを「月」と例えました。ギャスケルは「太陽」のよう。一見邪悪な人物にも善良さが秘められている、心安らかな世界観。特に、「婆やの話」は展開が巧みでハラハラする上、最後に深い感動を味わえる彼女らしい作品です。また、主に中上流階級を描いた二人に対して、彼女は労働者階級に注目しているという特異な点が挙げられます。産業革命当時、社会の変化を最も敏感に感じ取った鋭さは突出している様にも。柔和な筆致は男性主人公ではやや弱みとなっているものの、女性主人公で真価を発揮。2023/09/04
ふるい
11
キリスト教的な愛や忍耐を説く話が多く、『女だけの町』のようなユーモアがあまりなくてちょっとがっかり。あの『ねじの回転』の元にもなった「婆やの話」は、なかなか怖い幽霊譚でよかった。2019/10/07
アカツキ
8
ヴィクトリア朝時代に活躍した女流作家による8作の短編集。力強く読ませる文章なのだけど、徳のある人物が死んだりひどい目に遭って終わる話が多くて、ハッピーエンドが好きな私には合わなかった。幽霊譚「婆やの話」は悲劇があっていいし、そのドロドロした部分が面白くもあったのだけどね。2019/12/15
いやしの本棚
8
やっぱりギャスケル面白い。牧師の妻という立場から、教訓的な要素も多い彼女の短篇だけれど、それでもなおプロットの巧みさで読ませる。「異父兄弟」はベタだからこそ泣けた。好みは「婆やの話」と「終わりよければ」。「婆やの話」は広大なお屋敷が舞台の幽霊譚。開かずの翼棟、鳴り響くオルガンを聞こえないと言い張る使用人たち…ヴィクトリア朝らしさがたまらない。「終わりよければ」は、ミステリ風味があり、従僕と小間使いの家庭内での対立wなど、ヴィクトリア朝らしさが際立つ。2014/05/10
Alm1111
3
「異父兄弟」に名犬ラッシーが出てきます!これが元ネタだったりして。ギャスケルは、19世紀中頃という、女性が作家になるということがとてつもなく困難な時代に(それが幸運にもディケンズという有名作家の目に留まったとはいえ)本当に才能と実力の持ち主だったと思う。ディケンズにブロンテ姉妹との交友など、狭い世界!2023/07/17