出版社内容情報
乏しき時代に詩人であることとは-こうした問いを胸に孤高の歩みを続けたドイツの詩人ヘルダーリン(1770-1843).その詩は天上的ともたぐえられ,どこまでも気高く美しい.「パンと酒」「パトモス」など代表作39篇を収録.
内容説明
「乏しき時代に詩人であることとは」―こうした問いを胸に孤高の歩みを続けたドイツの詩人ヘルダーリン。理想と美の世界を遠望するその詩は、天上的とも言われ、どこまでも気高く、比類なく美しい。人生半ばにして精神の均衡を失し、後半生を精神的薄明のうちに生きねばならなかった詩人の、代表作39篇を収録。
目次
ギリシャ―St.に
自然へ
運命の女神たちへ
ディオティーマの守護霊に
許しを求めて
昔と今
生の道
短さ
世の喝采
若い詩人たちに〔ほか〕
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
124
名前だけは知っていたのですが、ドイツの詩人であるという割にはほとんど作品を知りませんでした。叙景詩と抒情詩が入り混じっている感じで印象に残る詩が数多く収められています。ギリシャ、エーゲ海、ネッカル、ドナウの水源で、ライン、ゲルマニアなど私の好みです。またこの訳者による一つ一つの詩の解題も参考になりました。2016/11/13
新地学@児童書病発動中
106
ヘルダーリンの詩には孤高の精神を感じた。美を表現するだけではなく、神話的かつ宗教的世界まで想いを馳せて、人間の生きた方そのものを問う内容が多い。非常に内面的でありながら、詩の描く世界のスケールが作品の中で徐々に広がっていくところに圧倒された。例えば、「ライン」ではライン川のことを描きながら、詩の内容がアジアに広がり、最後にはソクラテスが出てくる。これほど真摯な心を持った詩人はあまり見当たらない。そのために晩年は心を病んでしまったのだろうか。→2016/11/01
lily
104
ルソーが詩人だったら、みたいな冷静と情熱の間に絶えず揺らめく心の円軌道をなぞるようで愛の握手を交わしたくなる。精神の忙しさに自然も味方しないままに肉体が追いつかなかったのかもしれない。2020/11/14
双海(ふたみ)
33
独逸の詩人ヘルダーリン。「死ぬがよい!高貴な精神よ!この地上では君の住まう場を求めても 所詮甲斐ないのだ。」 「詩人とは聖なる器/その中に生の美酒が 英雄たちの/精神が なみなみとたたえられる」2015/07/02
イプシロン
28
諸行無常の世界をありのままに生きんとすることで逢う苦悩。それを歌ったのがヘルダーリンではなかろうか。人は多かれ少なかれ執着をもつ。苦を苦のまま受け取ろうとする人は少ない。しかし、彼はそのような受苦こそ幸福の根源ではないかと問う。現在の儚さを埋めるために名声や名誉を求めた古代ギリシャ人、受難に生きたイエスからあるべき生きようを、また流れるがままに流れゆく河に、ヘルダーリンは神がかった生を見たのではあるまいか。そんな風に思えたのである。2022/05/15